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この世の果てへと至る旅路

1 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/12/26(土) 01:37:53.91 ID:rZ9Qs5coo [1/4]
「この世の果てに連れていって欲しいな」

 唐突に先輩が、そんなことを言いだした。
 僕は飲みかけのオレンジジュースを机の上に置くと言葉を返す。

「何処ですか、それ」

「行ってみれば分かるよ、きっと」

 先輩がオレンジジュースを一口しながら一言。
 いつもの戯言ならば、そのまま聞き流してしまってもよかったのだが。
 なんだか今日の先輩は雰囲気が違う気がした。

「ね、連れていってよ」

「自転車で行ける距離ですか?」

 滑稽な返答だ、と僕は自分で思った。
 自転車で行ける距離かどうかなど関係ないだろうに。

「行けるよ、きっと行ける」

 悪戯っぽい子供の様で、何もかもを悟った聖人の様でもある先輩の笑顔。
 僕の視線はそんな先輩の笑顔に釘付けになってしまう。
 
「さ、連れ出してよ王子様」
 
「……」

 差し出された先輩の手を握る。
 想像していたよりも温かい先輩の手。離したらそのまま消えてしまいそうな先輩の手。

「……エスコート致します、お姫様」

「うむ、くるしゅうない」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1451061473


2 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/12/26(土) 01:44:19.40 ID:rZ9Qs5coo [2/4]
「暑くないですか?先輩」

 荷台へ声を掛ける。

「んー、暑いよ。すっごい暑い」

 傍に居なければ聞こえない大きさの先輩の返答。
 僕はその返答を聞いて安心した。
 暑いと言われて安心するのも変な話だが。
 声が返ってこないと不安になるほど、先輩は重量感がないのだ。

「日本の夏って感じだねー」

「辛くなったら言ってくださいね。日陰探します」

「……ありがと」

 後ろを振り返る。自分の汗が前髪を伝うのが見える。
 先輩はいつも通り、平然とした顔で僕の運転に揺られていた。
 暑いと言った割に汗は全然かいていない。
 いい事なのか、悪い事なのか。

3 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/12/26(土) 01:52:10.75 ID:rZ9Qs5coo [3/4]
「ねぇ」

「はい、なんでしょうか」

 木陰で佇む僕と先輩。
 学生にとっては夏休みでも世間的には平日の街並み。
 疎らな人通りは今の僕らにとって好都合だ。

「あれ、あれが食べたいな」

「……?」

 先輩の指差した方向を目で追う。
 僕のと同じような自転車。違う所を上げるとすれば、荷台に先輩の代わりにクーラーボックスが乗っている所か。
 その自転車の主と思われる麦わら帽子のおじいさんと目が合う。
 にんまりと音がしそうな笑み。
 僕はそんなおじいさんの笑みと先輩の笑みを交互に見比べてから、財布へと目を落とした。
 あまり浪費はしたくない。
 が、先輩の願望を浪費と表現もしたくなかった。

6 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/12/27(日) 19:04:59.06 ID:2n7j/CLko [1/6]
「おいしいね」

「はい、おいしいです」

 アイスを舐めながら並んで歩く僕と先輩。
 買ったのは先輩の分だけ。僕が舐めているのはおまけで貰った分だ。

「得しちゃったね。二人で来てよかった」

「そう、ですね」

 屈託のないおじいさんの笑顔がリフレインされる。
 僕が彼氏くんと呼ばれた時、先輩は特に何も言わなかった。
 だから僕も特に何も言わない事にした。
 気にならないわけではないが、気にしても仕方ないだろうし。

7 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/12/27(日) 19:24:30.66 ID:2n7j/CLko [2/6]
「あー、おいしかった」

 先輩はアイスを舐め終わるまでに5、6回ほどおいしいを口にした。
 決して、このアイスが特別おいしいわけではないと思う。
 名残惜しそうにアイスの棒を舐める先輩。
 小動物みたいで可愛い。

「さて、そろそろ行こっか」

「了解です」

 荷台に先輩が座ったのを確認して、僕はペダルを漕ぎ出す。
 自分でもどこへ向かおうとしているのか、分からない。
 先輩に聞いてもきっと明確に答えてはくれない気がする。
 悪意ではなく、先輩も答えが分からないからだろうけれど。

「このまま行くとどこに出る?」

 商店街を抜けた辺りで、先輩が聞いていた。

「多分海……ですね」
 
 この辺からはあまり出たことがないので、僕の返答も曖昧になる。
 間違っていても咎められることはないだろうが。

「海……か。いいね、海」

 先輩の一言に僕はペダルに込める力を少し強めた。
 急ぐ必要があるかは分からなかったが、答えあわせは早い方がいいだろう。
 

8 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/12/27(日) 20:15:07.89 ID:2n7j/CLko [3/6]
「キミは海、よく来るの?」

「いえ、ほとんど。海に繋がってるかどうかもうろ覚えでした」

 海水がギリギリ届かない辺りの波打ち際に立つ先輩。
 僕もそんな先輩に習って隣に立つ。
 この時期にしては人が少ないな、と思ったらどうやらここは遊泳禁止らしい。
 そんなことも知らなかった。

「んー、ちべたい」

 スリッパの先輩はずかずかと海の方へと進んで行く。
 スニーカーの僕はそんな先輩の様子を見守る。

「キミもおいでよー」

 ばしゃばしゃと音を立てながら先輩が振りかえる。
 日光を吸いこんでしまいそうな綺麗な黒髪。
 そんな黒髪とは逆に日光を反射してしまえそうなほど白い肌。
 僕はそんな先輩に見とれてしまった。
 アイスを舐めていた時とはまるで別人に見える。

9 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/12/27(日) 21:11:58.15 ID:2n7j/CLko [4/6]
「……あ」

 はしゃぎ気味に水音を立てていた先輩の身体がぐらりと揺れた。
 僕の視界の中でゆっくりと傾いていく先輩。
 続いて大きな水音。

「先輩っ!」

 スニーカーであることも忘れて先輩の元へ駆け寄る僕。
 水を吸って足元がどんどん重くなる。
 それでもなんとか先輩の元へと辿り着いた。

「先輩!大丈夫ですか!」

「あはは、少し足をとられちゃったよ」

 全身から水を滴らせながら笑う先輩。
 顔色は悪そうに見えない。ひとまずは安心だろうか。

「歩けますか、先輩」

「大袈裟だなぁ」  

10 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/12/27(日) 21:40:58.90 ID:2n7j/CLko [5/6]
 とりあえず波打ち際から避難してきた先輩と僕。
 日陰にいても寒いだけなので日向に並んで座る。
 この陽射しの強さだ、しばらくこうしていれば乾いてくれそうなものだが。

「……っしゅん」

 靴だけの僕はそれでいいが、全身濡れてしまった先輩はそうもいかない。
 早急に乾かさないと、風邪でもひいては大事だ。

「とりあえずこれ着てください、先輩」

 僕はTシャツを脱いで先輩へ渡す。
 汗でびしょ濡れで効果はあまりなさそうだが、無いよりはマシではなかろうか。
 
「肌着一枚で平気?」

「少なくとも、今の先輩よりは」

 小さく肩を震わせながら問いかける先輩に僕はそう言葉を返す。
 こんな状況にそぐわないかもしれないがなんだか変に安心してしまった。
 先輩が何も感じない人のように思えていたから。
 ちゃんと先輩が現実にいるものなのだと、実感出来たような気がしたのだ。

12 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/12/29(火) 12:54:45.64 ID:F1HAyKSGo [1/5]
「本当に大丈夫ですか、先輩」

「大丈夫だってば。心配性なんだから」

 服からぽたぽたと雫を垂らせながら歩く僕と先輩。
 もう少し乾かしてからにしませんか、と僕は言ったのだが。
 先輩達ての希望で出発することになったのだ。
 別に反論する気はないが、大丈夫なわけがないのも事実なわけで。
 
「ねぇ、後輩くん」

「なんでしょうか、先輩」

「水、買ってくれないかな」

「……そのぐらい、承諾の必要ないですよ」

 自販機に立ち寄り水を買う。
 喉が渇いたのだろうか、ついでに自分の分も買っておく。

13 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/12/29(火) 12:59:50.38 ID:F1HAyKSGo [2/5]
「……んっ……ぐ」

「……先輩、それは?」

 言ってからまぬけな質問をしたものだと自分で思った。
 銀色台紙に並んだ白い錠剤。
 見た目は市販の風邪薬と相違ないが、そんな生易しい物ではないのだろう。

「本当はね、持ってくる気なかったんだけど」

 僕の質問への返答代わりに先輩が口を開く。

「キミといれる時間を少しでも長くしたくってね」

 もう一度水を一飲みしてから先輩はそう続ける。
 僕の中の後悔が膨らむ音が聞こえた気がした。
 そんな覚悟が出来て僕が先輩を連れ出したかと問われれば答えはノーなのだから。
 先輩と入れる時間が少しでも長くなれば、と思ったのは事実だけれど。

14 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/12/29(火) 13:14:00.70 ID:F1HAyKSGo [3/5]
「さ、行こ」

「あの、先輩」

「ん?」

 僕の声に振り返る先輩。
 その表情に焦りや苦悶といった負の感情は見て取れない。
 そういう感情が見て取れればこの場で帰る選択肢を正当化も出来るものを。
 先輩のこういう所が僕を不安にさせる。
 
「……いえ、行きましょうか」

「しゅっぱーつ」

 怖くないですか、とか。不安じゃないですか、とか。
 いろいろ聞きたいことはあるのだけれど。
 どう答えられても納得できる気がしないので、僕は聞かない事にした

15 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/12/29(火) 14:05:39.25 ID:F1HAyKSGo [4/5]
 海岸線沿いを走る僕と先輩。
 照り付ける太陽のおかげで僕の靴はすっかり乾いていた。
 きっと先輩の服や髪も同じ状況なのではなかろうか。
 靴と違って服や髪だと状況が全く同じとは言い難いだろうが。

「また暑くなってきたねー」

「そう、ですね」

 ほんの少しずつ重くなっていくペダル。
 先輩が行きたい場所まで僕の身体は耐えられるだろうか。
 僕は元々そこまで体力があるほうじゃない。
 面倒くさいという理由で運動部に入ることを敬遠していた自分に少し苛立ちを感じてしまう。

「綺麗だねー、海って」

 先輩に言われて視線を少し水平線の方へ向ける。
 光を反射してキラキラと輝く海。
 そんな海を細い眼で見つめる先輩。
 先輩の方が綺麗だ。思っても言えないけれど、本気でそんなクサイ事を思った。

18 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/12/30(水) 23:36:34.30 ID:MCqTtFHIo
 水平線へ夕日が沈んでいく。
 その様子を僕と先輩は並んでみていた。
 凄く綺麗な光景だ。
 もっと楽しむ余裕があればなおよかったのだが。

「きれー……」

 しみじみと呟く先輩。
 さっきよりも声のトーンが低いような気がする。
 自分の気持ちを勝手に反映させてしまっているだけだろうか。
 
「来てよかったね」

 口元を緩ませながら、顔だけでこちらを向く先輩。
 折角の綺麗な黒髪が潮風でパリパリになってしまっている。

「……ん」

 自分でも全く無意識だった。
 不意に伸びた手が、先輩の髪に触れる。
 頭頂部ではなくもみあげ当たりに触っている辺り、無意識下でも僕は僕だ。
  

19 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/12/31(木) 00:21:39.11 ID:4lxiKfono [1/5]
「あはは、くすぐったいよ」

 意に介する様子の無い先輩。
 半分ほど沈んだ夕日が僕達の影を伸ばす。
 先輩は少し目を細めて僕を見つめている。
 心臓の音が手を伝わって先輩に伝わっていないか不安だ。

「あ、あの……先輩」

「なにかな?」

 これは俗に言う、いい雰囲気ってやつなのではなかろうか。
 童貞特有の勘違いというならば、別に勘違いで構わない。
 音が自分でも聞こえるほど強く喉を鳴らす。

「せんぱ……っ」

 意を決して言葉を発した僕の体が防波堤に押し付けられた。
 柔らかい先輩の感触が全身に触れる。
 鼓動が一気に早鐘を打つ。
 その鼓動の音に負けず劣らずの高音。
 サイレンの音が海岸線を通り過ぎていった。

20 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/12/31(木) 00:34:14.39 ID:4lxiKfono [2/5]
「……」

「……」

 先輩は何も言わない。
 僕も何も言えない。
 さっきのパトカーが先輩を探しているとは限らない。
 もちろん、失踪した先輩の捜索願が出ていてもおかしくはないわけだが。

「……そろそろ、行こうか」

 先輩の小さな声。
 相変わらず感情は透けてこない。
 ここで僕が取り乱しながら帰る案を提示したら先輩はどんな顔をするのだろうか。
 そんなくだらない事を考えながら僕は立ち上がった。

21 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/12/31(木) 01:00:27.52 ID:4lxiKfono [3/5]
「……んぐ」

 先輩が薬を飲んだのを確認してから自転車をこぎ始める。
 人気の無い海岸沿いは薄暗くて、明かりと呼べるものはぽつぽつと立った街灯と僕の自転車から伸びるライトの明かりだけ。
 普段通っている道はとうに通り過ぎてしまって、今は道なりに道を進んでいる状態だ。
 多少休んだとはいえへろへろの足。
 自転車の速度低下は自分でも分かる次元になってしまっている。

「少し歩こっか」

「……はい」

 気遣ってくれる先輩の言葉に強がる余裕も無い。
 このまま海岸沿いを進むとどこへ出るのだろう。
 どこの街にも繋がっていないわけはなかろうが。

「うりうり」

「……何するんですか、先輩」

 先輩が指先で僕の頬をぐりぐりしてくる。

「難しい顔、してるからさ」

 あくまでも軽い口調で先輩が言う。
 鏡があれば確認したかった。
 僕は今一体どんな顔をしているのだろう。
 暗くなければ先輩の瞳に映る自分の顔が確認できたかもしれない。

22 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/12/31(木) 01:05:29.52 ID:4lxiKfono [4/5]
「……ごめんね」

 先輩が何か言った気がした。
 きちんと聞こえたような気もする。

「……?」

 でも僕は敢えて聞こえなかった方を選んだ。
 先輩のためか自分のためかは分からなかったけれど。

24 名前:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/05(火) 11:18:00.56 ID:vBFgfpMaO [1/3]
「……ふぅ」

 立ち上る湯気の中、僕は体を脱力させた。
 お風呂がこんなに気持ち良いのは生まれて初めてかもしれない。
 顔にばしゃばしゃとお湯を被るとまた小さく息を吐く。

「……どうだ」

「あっ、はい。気持ち良いです」

「……そうか」

 貸し切りに近い湯船。
 話しかけてきたのはこの銭湯の主人であるおじいさん。
 僕がこうして安堵の息を吐けるのもこの人の厚意のおかげである。
 



25 名前:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/05(火) 11:25:13.86 ID:vBFgfpMaO [2/3]
 走り疲れてもはや足取りすらふらふらになってしまった僕。
 自転車を支えになんとか歩いて辿り着いたのがこの銭湯だった。

「わっ、銭湯だよ銭湯っ」

 へとへとな僕を元気付けるように先輩が言う。
 もしかすると単に初めて見る銭湯にテンションガ上がっただけかもしれないが、ここはいい方に捉えておく。

「……もう閉まってるみたいですよ」

「……え」

 中に明かりは付いているものの、ドアに掛けられた札は『閉店』になっていま。
 先輩が心底残念がっている。
 僕はというと、銭湯が閉まっていることよりも銭湯が閉まるような時間になっていることの方を気に掛けていた。
 

26 名前:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/05(火) 11:47:29.35 ID:vBFgfpMaO [3/3]
「……なんだ、お前ら」

 閉店の札をしげしげと眺めていた僕らに銭湯の中からガラス越しに声が掛けられた。
 先輩よりも背の小さい白髪の老人。
 老人としてもかなり歳が進んでいる方であろう。

「あの、今日はもうやってないんですか?」

 先輩がガラス越しに言葉を返す。

「……」

 潮風でパサパサの髪をした少女と汗でパリパリのTシャツを着た少年。
 そんな僕達が目を細めた老人の目にどう写ったのかは分からないが、僕らは閉店後の銭湯の中へととおされたのだった。

27 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/06(水) 00:00:49.23 ID:Z5pVxAxlo [1/7]
「……」

 僕は男湯と女湯を隔てる壁の方を見る。
 この壁の向こう側に産まれたままの姿の先輩がいるわけだ。
 なんてことを考えてしまったらもうダメだ。
 意識が全て壁の方へ吸いこまれてしまう。

「きもちーねー、後輩くん」

「っ」

 突如先輩の声が響いてきた。
 完全に不意を突かれた僕はばしゃんと音を立てて湯船へ沈む。

「どしたのー?」

「なんでもないですー」

 先輩の声に釣られて間延びした声が出た。
 頭がふらふらする。
 湯冷めしないうちに出た方がいいかもしれない。

28 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/06(水) 00:52:31.79 ID:Z5pVxAxlo [2/7]
 浴室から出ると、鈍い音を立てながら乾燥機が回っていた。
 僕はタオルを腰に巻くと、その鈍い音の正面に座る。
 先輩と一緒に旅へ出なければ一生経験することがなかったような経験。

「……勝手に洗わせてもらったが」

「いえ、助かりました」

「……そうか」

 それだけ言っておじいさんは男湯の脱衣所から出ていってしまった。
 なぜおじいさんはここまでしてくれるのだろう。
 こういうのを聞くのは少々無粋なのかもしれないが。

29 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/06(水) 01:40:39.50 ID:Z5pVxAxlo [3/7]
 体の疲労が大分解消された僕は脱衣所の前で先輩を待っていた。
 先輩にとっては初体験の事ばかりだろうし色々心配なのだが。
 だからと言ってここで女湯の脱衣所へ入って行くのもおかしな話だ。
 悶々としながら僕は待つ。

「あ、待たせちゃったかなー」

 程なくして現れた先輩。
 水気の残った髪が頬に張り付いている。
 ほんのりと蒸気した頬。
 病院に居た時や並んで歩いていた時ともまた違う印象。
 まぁどの先輩も魅力的なのだけれど。

32 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/06(水) 22:21:25.02 ID:Z5pVxAxlo [5/7]
「ありがとうございました」

 僕はおじいさんに深々と頭を下げた。
 もう動けないとまで思っていた体の疲労は大分解消されている。
 その代わり逆にもう動きたくないと言う感情も湧いてきたが。

「……行くのか」

 おじいさんは先輩と僕を交互に見てから呟くように言った。
 こんな時間に出歩いている理由は聞いてこない。
 聞かれても困るけど。

「ありがとう、おじいさん」

「……うむ」

 おじいさんは何か言いたげに見える。
 だが何も聞いてこない。
 理由も無く助けるはずがない、というのは僕が捻くれているだけなのだろうか。
 外へと向かう先輩の背中を見ながら僕は財布を開けた。

「……いらん」

 既にお札に指を掛けていた僕。
 その言葉を聞いて財布から手を離すとおじいさんの方を向いた。
 正直、状況を考えると素直に受け入れるのが正しいのだが。

33 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/06(水) 22:43:04.15 ID:Z5pVxAxlo [6/7]
「どうしてここまでしてくださるんですか」

 ここで聞かない人の方が少ないのではなかろうか。
 そんな風に自分に言い訳しながら僕は疑問を口にした。

「……」

 おじいさんは僕の方を見ていない。
 去って行った先輩の背中を追うように出入り口の方を見ている。
 答えにくい事だったりするのだろうか。

「……その金はあの子に使ってやってくれ」

 今度はちゃんと僕の方を向いておじいさんが言う。
 僕の質問の答えにはなっていないが。

「……お世話になりました」

 優しい人もいるものだ、と納得して僕はもう一度頭を下げた。
 そしてそのままおじいさんの方は見ずに出入り口へ向かう。

34 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/06(水) 23:43:15.69 ID:Z5pVxAxlo [7/7]
「夜になっても涼しくはならないねー」

「お風呂に入った直後なのもあるかもしれません」

「あ、そっかぁ」

 傍から見ると滑稽に聞こえるであろう会話だ。
 先輩は小さく笑っている。
 僕も釣られて笑った。

「これからどうしましょうか、先輩」

「んー……」

 先輩がここにきて初めて悩む素振りを見せた。
 何か心境の変化があったのだろうか。
 僕は悩んでない時間が無いような状況なのでむしろ今更ではあるけども。

「あっち、あっちに行ってみよう」

 悩んだ末に先輩が指差した方向は街とは反対方向だった。
 僕は何も答えずサドルを跨ぐ。
 直後、荷台に何かが乗った気配。
 喉を鳴らす音も聞こえた。
 音が止まるのを待ってから、僕はゆっくりとペダルを漕ぎ出した。
 
35 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/07(木) 00:00:02.72 ID:ldVDz/rRo [1/3]
『病院に帰ろう、連れていって』

 先輩がそう言いだすのを僕は待っているのかもしれない。
 待つ必要なんてないだろうに。
 自転車を漕いでいるのは他ならぬ僕なのだから。
 先輩を連れて帰ることはそう難しい事じゃないはずだ。

「銭湯って洗濯機あるんだね、初めて知ったよ。キミは知ってた?」

「いえ、僕もほとんど利用した事無かったので」

「そうなんだ」

 先輩は相変わらず他愛もない会話を続けている。
 事は僕が思っているほど重大ではないのだろうか。
 誘拐未遂騒ぎがどうのと言う話はどうでもいい。
 先輩の身体が平気ならなんだって。

36 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/07(木) 00:36:17.51 ID:ldVDz/rRo [2/3]
 どのぐらい走っただろうか。
 立ち並んでいた建物がだんだんと疎らになり、その代わりに自然が増えてきた。
 街灯もほとんど無く、車の往来もほとんどない。
 まるで世界に先輩と二人だけになってしまったような感覚。
 先輩の息遣いが大きい音に聞こえた。

「どの辺りまで来たんだろうね」

 先輩がぽつりと呟く。
 とても小さい声なのに、まるで音叉のように反響して耳に響いた。

「確認してみますか?」

 僕は自転車の速度を落としながら尋ねる。
 
「確認できるの?」

「多分、大丈夫だと思います」

 僕は自電車を止めると、スマートフォンを操作してマップを起動した。
 山間に位置するので少し心配だったが、右往左往しつつも矢印が停止する。
 アテも無く走っていたが結構な距離を来たものだ。
 もし捜索願が出ていたとしてもそう簡単に見つかる距離ではなくなっている。
 その事実がまた少し僕の胸にちくりと刺さった。
 
39 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/08(金) 01:35:16.26 ID:KFhz6mwno [1/13]
「どの辺りまで来たかそれで分かるの?」

 スマートフォンを覗き込んでいた僕の耳元に先輩の声。
 続けて先輩の顔がにゅっと僕の首元を掠めながら現れた。
 先輩の髪に首筋を撫でられて僕の身体が思わず身震いする。
 心臓の鼓動も当社比5割増しだ。

「どこを見たらいいの?これ」

「あ、えと……ですね」

 先輩の細い指がスマートフォンを奪い取ろうとする。
 その過程で僕の手と先輩の手が触れた。
 なんて冷たい肌なのだろうか。
 僕の体温が吸い取られるような錯覚すら覚えるほどだ。
 それで先輩の身体が温かくなるなら、それはそれで構わないけれども。

40 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/08(金) 02:00:34.75 ID:KFhz6mwno [2/13]
「ここが病院?」

「ですね」

「結構遠くまで来たんだね」


 先輩は僕から受け取ったスマートフォンをまじまじと眺めている。
 電子機器が珍しいのだろうか。
 事実、先輩がそういうものを使っているのを見た記憶は一切ない。

「はい、返すよ」

 また先輩の指が触れた。
 さっきは感じる余裕の無かった感触を味わう。
 柔らかい。
 自分の指とは根本的な構造が違うとすら感じるほどに。

41 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/08(金) 02:06:05.32 ID:KFhz6mwno [3/13]
「さっきからどうしたの?」

「へっ?」

 自分でもどこから出したか分からない声が出た。

「心ここにあらずって感じがするよ。もしかして疲れた?」

「えと、その……」

 疲れていないわけではないけれど、心ここにあらずな理由は全く別なものなので。
 というか思いっきり先輩に察知されてしまっていた事が恥ずかしい。
 僕はどもりながら思わずたじろいでしまう。

「少し休もっか」

「……はい」 

42 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/08(金) 02:29:36.82 ID:KFhz6mwno [4/13]
「……んぐ」

 僕と先輩は道の外れに転がっていた大きなコンクリート片に腰を下ろした。
 元がなんだったのかは分からないが、風化による削れで腰掛けに丁度良いのは確かだ。

「いよっと」

 先輩が握っていた薬の銀色台紙を放り投げる。
 中身が無くなったのか、はたまた薬を飲む気が失せたのか。
 どちらにせよ先輩が薬を飲むことはもうないのだろう。

「もう平気?」

「はい、大丈夫です」

 元から平気だったのだが、なんて余計な事は言わずに僕は答える。
 僕の返答を聞いて先輩は立ち上がり自転車の方へ向かった。
 帰ろう、の一言は出てこない。
 僕らは同じ方向へまた進み始めた。

45 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/08(金) 22:45:52.34 ID:KFhz6mwno [6/13]
 何度目か分からない休憩。
 山が近くなってきたせいか傾斜や凹凸が大きい道が多くなってきた。
 先輩が人ひとりの重さを持っていたらきっとここまでこれなかっただろう。
 人ひとりの重ささえ持ってないから心配なのだけれど。

「……ふー」

「大丈夫ですか?先輩」

 僕は思わず先輩に聞いてしまった。
 聞くつもりは無かったのだが、完全に脊髄反射的に言葉は出てしまって。
 要は無意識的に聞いてしまうほど気になっていたのだろう。

「へ?何が?」

「いえ、気のせいならいいんです」

 やっぱり濁された。
 いや、自覚が無いのかもしれない。
 そっちの方がよっぽど危険な気がする。

「そこで止められると凄い気になっちゃうなぁ」

「……すいません」

「謝られても困っちゃうけど」

 先輩が困ったように微笑んだ。
 深く息を吐くことが増えてますが大丈夫ですか、と言わなかった自分を褒めたい。
 先輩が喉を鳴らす音を聞かなくなってから結構経っている。
 何も無いわけがない。
 聞いて先輩の身体がよくなるなら何度でも聞くが。

46 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/08(金) 22:55:16.34 ID:KFhz6mwno [7/13]
「ほらまた」

「……あ」

「凄く難しい顔、してる」

 先輩の人差し指が僕の額をこつんと突いた。
 僕の目の前に先輩の顔がある。
 白くて儚くて、なんだかすごく存在が希薄に感じてしまう。

「……ごめんね、厄介な事頼んじゃって」

 今度は聞こえないフリ出来ない状態で謝られた。
 どう答えるのが正解なのだろうか。
 大丈夫です、気にしないでください。
 謝るぐらいなら最初から、言わないでください。
 ここまで来たんですから、最後まで付き合いますよ。
 色々と言葉は浮かんではきたけれど、そのどれも音になる前に喉元で潰れていった。
 どの言葉も先輩を引き留めることは出来なさそうだから。
 無駄な言葉を発すれば、先輩が更に遠くなってしまいそうだから。

47 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/08(金) 23:04:52.91 ID:KFhz6mwno [8/13]
「ここがこの世の果て、かなぁ」

 先輩がごろりと草むらの上で横になった。
 気楽にごろんといった風ではなく、横になるのも億劫と言った感じで。

「まだ行けますよ」

 僕は思わず声を上げた。
 先輩が遠くなってしまいそうだなんてかっこつけている場合ではない。

「うん、分かってる」

 先輩は起き上がることなくゆっくりと目を閉じながら答える。
 嫌な汗が僕の頬を伝った。
 よく見たら先輩の額にも大粒の汗が浮かんでいる。
 全く気付かなかった。
 いや、先輩なら大丈夫だなんて勝手に考えて気付こうとしていなかっただけか。

「私の方がね、結構限界みたい」

 先輩に言わせてしまったことを後悔した。
 やっぱり余計な事は言わない方がいい。

48 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/08(金) 23:20:25.12 ID:KFhz6mwno [9/13]
「何故こんな事をしようと思ったんですか」

 そんな僕の意志とは裏腹に言葉が口から飛び出してきた。
 ここまでやらせておいて何も教えてくれないのか、という怒りというか悲しみというか。
 そんな僕の中でぐるぐる回っていた感情が音になって飛び出したのかもしれない。

「んー、なんでだろう?突然だったんだよね、思いついたの」

 先輩は務めて平静に答えを返してくる。
 それが僕の中にある言い知れない感情をさらに煽った、気がした。

「両親は優しいし、お医者さんも全力で頑張ってた」

 言葉を続ける先輩。
 それは僕に語りかけているようでもあり、独り言を上の空で呟いているようでもあった。

「不満は自分の身体の事だけ。だからこんな事したのかな……ごほっ、ふっ……く」

「先輩っ!」

 そこまで言って先輩が大きく咳き込んだ。
 横たわった先輩の身体が大きく跳ねるほどの咳。
 僕はすぐに先輩の傍へ駆け寄った。

49 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/08(金) 23:33:02.28 ID:KFhz6mwno [10/13]
「死にたいわけじゃなくて……生きるのが辛くなった、だけ」

 先輩が僕の肩を掴む。
 あまりに弱弱しい手の平。
 付いていた血が僕の肩にじんわりと滲む。

「キミにしか頼めないと思ったんだ。ごめんね」

 先輩が言いたいことを言い終えたと言った感じで沈黙する。
 僕は全身で先輩の身体を支えた。
 重い。僕は本当にこの人をここまで運んできたのだろうか。

「……ふー……ふー」

 先輩はまだ生きている。
 まだ生きている、と言う次元の状態ではあるが。
 どうするのが正しいのだろうか。
 僕は考えようと思ってやめた。
 正確に言えば考えるまでも無かった。

50 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/08(金) 23:38:12.04 ID:KFhz6mwno [11/13]
 僕は先輩を背中に背負って走り出す。
 最初からここまで来なければよかったじゃないか。
 このまま先輩が死ねばお前のせいだぞ。
 なんて湧きあがってくる思考に今は蓋をして。

「すいません、先輩」

「……」

 もう聞いているかは分からないが、僕は先輩に謝罪を口にした。
 ここまで連れ出した謝罪もある。
 生きるのが辛い先輩をまた辛い世界へ引き戻してしまう事への謝罪も含めた。
 きっと先輩も僕と同じだったのだろう。
 止めて欲しいけど、自分では言い出せなくて。
 涙を流しながら僕は走った。

51 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/08(金) 23:39:35.72 ID:KFhz6mwno [12/13]
 走って、走って、走って、走って。
 気付けば僕は突っ伏していた。
 全身が痛い。
 立ち上がろうとして驚く。
 体に全く力が入らなかった。
 ここまで疲労していたのか、僕の身体は。
 瞼が重くなる。
 先輩は無事だろうか。
 このまま僕も死んでしまえばいい。
 そんな事を考えていたような気がする。
 
54 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/10(日) 00:52:05.16 ID:YSY4iPZSo [1/5]
 気が付いたら僕は天井を見上げていた。
 見たことのある天上だ。
 僕は体を起こそうとしてふと気付く。
 身体が動かない。
 拘束されたりしてるわけではないので、いわゆる意思に反してと言うやつだ。
 それでも何とか動こうとして僕はガタンと身を揺らす。
 そんな僕の動きに近くの看護師さんが気付いた。

「先生、患者さんが目を覚ましました!」

 辺りが慌ただしさを増していく。
 僕はそんな喧騒から逃れるように目を閉じた。
 後で聞いた話なのだが僕はどうやら3日程眠っていたそうだ。
 そんなに眠った自覚はないし、そんな経験なかったので実感は全くなかったが。

55 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/10(日) 01:12:09.60 ID:YSY4iPZSo [2/5]
「おはよう、寝坊助さん」

「おはようございます」

 動けるようになってすぐ、僕は先輩に会いに行った。
 僕が気を失った直後に僕らは巡回していたパトカーに保護されたらしい。
 あと数分遅れていたら危うい状態だったらしく、僕の頑張りは無駄ではなかったとの事。
 そもそもの原因が僕であった事について、大人達はあまり大きく責めなかった。
 
「この世の果てに連れていって欲しいって言ったのに」

 たくさんの管に繋がれた先輩の声は、囁くようにか細い。
 
「……すいません」

 その声に釣られて僕の声も小さくなる。

「……恨むよ」

 先輩は天井を見ながら話している。
 僕は先輩をじっと見つめながら言葉を返す。

「……構いません」

 先輩の顔がゆっくりとこちらを向いた。
 悪戯っぽく微笑んでいる。
 それは僕が想定していた表情とあまりにも違っていて、僕はぽかんとした顔で先輩を見つめた。

56 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/10(日) 01:21:19.19 ID:YSY4iPZSo [3/5]
 先輩の左手の小指が弱弱しく伸ばされた。
 何事か分からない僕。
 しばし見つめ合う僕達。

『ゆ、び、き、り』

 先輩の口の動きからなんとかそう読み取れた。
 僕はそっと左手を差出すと、先輩の小指を自らの小指で絡め取った。

『ま、た、ね』

 先輩が最後に言った言葉は、きっとその三文字だ。
 ここで言う最後というのは今際の言葉ではなく、単に先輩が眠りに付いたと言うだけの事。
 僕はひんやりとした先輩の感触を残した小指をぎゅっと握ると病室を後にした。

57 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/10(日) 01:23:30.47 ID:YSY4iPZSo [4/5]
「あれ、こんなに近かったんだ。ここ」

「あの時は自転車でしたからね」

「なんだか寂しい感じがするなぁ」

「今度は自転車で来ましょうか」

「お、いいね。それ」

「もうあんな無茶はゴメンですが」

「ふふふ、約束は守ってもらうよ」


「今度こそ連れていってね、この世の果てまで」

「……エスコート致します、お姫様」

「うむ、くるしゅうない」

姉「私の義妹」妹「私のお姉ちゃん」

1 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/19(木) 19:08:57.18 ID:HzgNaAfUO [1/6]
義妹が私の妹になったのは、私がまだ中学生に上がりたての頃。
明るそうな母親とは対照的に、おどおどと母親の背に隠れる姿は昨日の事のように鮮明に思い出せる。
きっと私の顔が怖かったのだろう。
離婚だの、再婚だの、色々立て込んでいたから。
そのせいで私は妹の中で「怖いお姉ちゃん」になってしまったのではなかろうか。

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2 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/19(木) 19:13:27.43 ID:HzgNaAfUO [2/6]
「……お姉ちゃん、起きてる?」

「ん……起きてるよ」

「お母さんが、朝ご飯って……」

「あー、今行く」

「……」

「……もう行っちゃったか」

3 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/19(木) 19:19:35.25 ID:HzgNaAfUO [3/6]
私は大きく欠伸をすると、一階へ降りてリビングへ向かった。
朝が苦手な私はいつも妹に起こしてもらっている。
全国のシスコンが聞いたらガタッとなるシチュエーションだろう。
半開きのドアに顔半分隠しながら、ビクビクと声を掛けてくる妹というのも、人によってはご褒美だろうか、
私としては不本意なのだが。

4 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/19(木) 19:24:17.65 ID:HzgNaAfUO [4/6]
「おはよう、お寝坊さん」

「……おはようございます」

「パンとご飯、どっちにしましょうか」

「パンで」

「いつもの?」

「いつもので」

5 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/19(木) 19:32:11.36 ID:HzgNaAfUO [5/6]
いつものぎこちない会話。
別にこの人のことが嫌いなわけじゃない。
きっと私は母親という存在そのものが苦手なのだろうと思う。
それは誰であっても変わりないのだろう。
そんなことを考えながら歯を磨き、適当に髪を整える。
制服に着替えながら、再び大欠伸。
誰に向けるでもない挨拶をしながら、私は学校へ向かった。

9 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/19(木) 21:13:48.63 ID:jHptHv4BO [1/5]
「朝から不景気な顔してんね」

「……ほっとけ」

「おー、こわ」

「妹ちゃんに言いつけちゃおっかなー」

「……ぐ」

「冗談だよ、じょーだん。そんな怖い顔すんなって」

「……生まれつきだっての」

10 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/19(木) 21:22:16.97 ID:jHptHv4BO [2/5]
こいつは私の数少ない友人。付き合いの長さだけで言えば、妹よりも長い。
こんな奴だが実際親友と呼んでも良い存在だ。
しかしよりにもよって妹はなぜこいつのいる部活へ入ったのか。
そのせいで弱みでも握られたかのように度々こんなイジりを受けてしまう。
いやまあ、妹に悪気はないのだろうし、そもそもなにも悪くないのだが。


11 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/19(木) 21:25:26.37 ID:jHptHv4BO [3/5]
「しっかし、あんたは相変わらず見てて飽きないわ」

「……?」

「すぐ顔に出るからさ、からかい甲斐があるよ」

「顔に出てるのか、私は」

「そりゃもう、ありありと」

「……そ、か」

12 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/19(木) 21:28:09.51 ID:jHptHv4BO [4/5]
多分それは、こいつにしか分からないことなのだろう。
そんなところに私は助けられている。
しかしながら、本当に伝えたい相手には全く伝わっていないのだ。
助けられてばかりではいけないという事なのだろうか。
私は一番後ろの席で、窓に向けてため息を吐いた。

15 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/20(金) 18:05:42.35 ID:w1noihB1O [1/14]
(……お、一年は体育か)

(あいつ、相変わらず足遅いなー……陸上部なのに)

(あ、こけた……)

(……)

「あてっ」

「おう、随分と余裕そうじゃないか」

「……」

「なんだ、文句でもあるのかその顔は!」

(なんも言ってないのに)


16 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/20(金) 18:11:14.55 ID:w1noihB1O [2/14]
私は努めて普通だ。
いや、普通にしているつもりになっているだけなのだろうか。
こんな理不尽な怒られ方をするのも初めてではない。
前の母親にもよく言われていた気がする。
あまり思い出せない、思い出したくないの間違いだろうか。
先程こけた妹の姿は思い出せる。微笑ましい姿に少し頬が緩んだ。
こんな風にいつでも笑えればいいのかもしれない。
私にはとても難しいことに思えたが。

17 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/20(金) 18:17:49.30 ID:w1noihB1O [3/14]
「今日は何パンにしようかなー」

「……焼きそばの気分だな」

「んー、私はコロッケだね」

「……」

「……」

「じゃん」

「けん」

「ぽんっ」

「やりっ、今日も私の勝ちぃ」

「……次は負けんぞ」

「はっはっはっ、いつでも掛かってきなさい」

18 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/20(金) 18:34:56.77 ID:w1noihB1O [4/14]
うちの学校の購買は、漫画などであるように争奪戦になったりはしない。 
食堂がある上に弁当持ち込みも可能なので当たり前といえば当たり前だが。
まず友人に頼まれたパンを摘み上げると、次に自分のお目当てへと手を伸ばす。
その時、不意に伸ばされた誰かの指先が触れる。
私の焼きそばパン気分を邪魔するとはいい度胸ではないか。
私は伸びてきた手を視線で辿る。

19 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/20(金) 18:40:37.90 ID:w1noihB1O [5/14]
「……あ」

「……お」

「あ、えと……ご、ごめんなさいっ」

「おい、待てよ」

「……」

「持ってけ。おごりでいい」

「え、でも……お姉ちゃんの分が」

「私は……本当はコッペパンの気分だったんだ」

「おばちゃん、会計お願い」

「……お姉ちゃん、ありがとう」


「それでコッペパンなのか、ウケる」

「……うるさい。コロッケ部分だけ齧り取るぞ」

「そりゃ勘弁」


20 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/20(金) 18:58:07.16 ID:w1noihB1O [6/14]
放課後、私は教室に残り何をするでもなく校庭を見ていた。
野球部の声出しやサッカー部のランニング、実に青春と言った光景である。
昔、部活に所属していた頃を思い出す。
とは言っても、私の部活に対する態度
はあんな汗と涙の結晶という感じではなくて。
身体を動かしている間は色々なことを忘れられるから、そのためだけにやっていた節がある。

22 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[sage] 投稿日:2015/11/20(金) 20:29:48.87 ID:w1noihB1O [8/14]
「こらー、用の無い生徒は早く帰らんかー」

「……何してんだ?お前」

「つまんない反応だなー……てか、それ私のセリフ」

「部活はどうした」

「大会前は自主練。その程度のことも話さないんだ」

「……」

「もーすこし仲良くしてあげりゃいいのに」

「そう簡単な話じゃない」

「そうかね?」

「そうだよ」

23 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/20(金) 20:37:38.62 ID:w1noihB1O [9/14]
部外者だから気楽に言える。
部外者だからこそ、気楽に言ってくれる。
私は帰路に着きながら言われた言葉を反芻していた。
本当は簡単な話なのだろう。
私達は姉妹だ、仲良くしていても不自然ではない。
妹が望んでいるのかは知らないが、少なくとも私はそれを望んでいる。
いや、それだけなのだろうか。
この違和感がいつも、私の邪魔をする。


24 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/20(金) 20:39:24.90 ID:w1noihB1O [10/14]
「……お、おかえり。お姉ちゃん」

「ん、ただいま」

「……あ、あの」

「どした」

「今日のお昼……ありがとう」

「別にいいって」

「う、うん……」

「……」

「……」

25 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/20(金) 20:46:20.38 ID:w1noihB1O [11/14]
いつも弁当なのになぜ購買にいたんだとか、大会前だったんだな、とか。
会話の種はたくさん落ちているはずなのに、私はそれらが芽吹く前に全て摘み取っていく。
そのせいで妹は、困ったような顔で私を見ることしか出来ないのだろう。
不器用な私、とでも言えば少しは自己弁護できるだろうか。
私は鏡の前で苦笑した。
やはり私には難しいよ。

26 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/20(金) 21:07:05.49 ID:w1noihB1O [12/14]
「たっだいまー」

「おかえり、お父さん」

「あれ、お母さんはまだ帰ってきてないのかい?」

「今日は夜勤の日でしょ」

「あれ、そうだったっけ……」

「アルツハイマー?」

「まだそんな歳じゃないと信じたいね」

「すぐに夕飯の支度するね」

「いつもありがと。でも、お腹空いたら先に食べててもいいんだ」

「うん、分かってる」




27 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/20(金) 21:18:32.90 ID:w1noihB1O [13/14]
私は母があまり好きでは無かったが、私は母に似ていると自分で思う。
だから母があまり好きでは無いのかもしれない。母もそうだったのかもしれない。
父が私を気にかけてくれているのは分かっている。
だからこそ私はこんな私もあまり好きではない。
静かな食卓。
どこもこうなのだろうか、他所は違うのだろうか。
どうでもいいことを考えて、また会話の芽を摘んでいる気がする。
だがどうしようもない。
そう、どうしようもないのだ。

30 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/21(土) 19:57:11.26 ID:OumhvGLVO [1/11]
「お、お姉ちゃん……」

「どうした、何かあったのか」

「た、タオルを忘れちゃったみたいで」

「ん、待ってな」


「ありがとう、お姉ちゃん」

「……」

「おねぇ、ちゃん?」

「あ、いや。どういたしまして」

「……?」

31 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/21(土) 20:03:22.10 ID:OumhvGLVO [2/11]
思わず見蕩れた、なんてとてもじゃないが口に出来るわけがない。
ここ数年で妹は急に大きくなっている。もちろん背の話ではない。
きっと母親に似たのだろう。私は似ていない。当たり前だが。
別に大きいから好きとか小さいから嫌いとかいう気はないが、やはり大きいと目に付く。
不審に思われていないといいが。

32 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/21(土) 20:09:30.99 ID:OumhvGLVO [3/11]
「確かにあの子のナイスバディーは破壊力あるよね」

「……セクハラとかしてないだろうな」

「ま、まつまさかー……あはは」

「……」

「ま、だけだ陸上向きではないよねー」

「こっち見て言ってないか」

「そりゃ被害妄想ってやつだ」

「お前よりはあると思うが」

「は?」

33 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/21(土) 20:15:15.16 ID:OumhvGLVO [4/11]
私が変なわけではない。
笑い話にして濁してしまえばそう思える気がした。
気持ちが晴れるわけではないが、少なくとも誤魔化してはしまえる。
どこぞのパパでないが、これでいいのだ。
これでないといけない。

34 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/21(土) 20:19:11.81 ID:OumhvGLVO [5/11]
「そういや」

「む?」

「さっき妹ちゃん、知らない男の子と歩いてたなぁ」

「……そりゃまあ、そういう事もあるだろ」

「ありゃ屋上前の踊り場に行くつもりだろうね」

「誰も聞いてないだろ」

「……ぷっ、ひでぇ顔」

「誰のせいだ」

「あんたが一番よく分かってんでしょ」

「……顔洗ってくる」

「はいはーい」

35 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/21(土) 20:22:59.95 ID:OumhvGLVO [6/11]
私をからかうための嘘かもしれない。
いや、本当だとしても私には関係ない。
だと言うのに、私の足は引き寄せられるように階段を登っていく。
手洗い場はとうに通り過ぎた。どんな顔をしているのだろう。
せめて妹を怖がらせない顔であるとよいのだが。

36 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/21(土) 20:27:13.64 ID:OumhvGLVO [7/11]
「ぼ、僕じゃダメかな……?」

「……ごめん、なさい」

「どうして?他に好きな人でもいるの?」

「……」

「他にいないなら、とりあえず僕でも……」

「い、いやっ……」


「……おい」

「……?」

「……ひっ、す、すいませんっ!」

37 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/21(土) 20:31:52.33 ID:OumhvGLVO [8/11]
自慢ではないが、私はでかい。もちろん妹のでかいとは違う方向でだ。
年頃の女の子としては男子にビビって逃げらるような大きさは、ほんとの意味で自慢にならない。
だが今だけは役に立って助かったと思える。
ただの告白なら見届けるのもやぶさかでは無かったのだが。


38 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/21(土) 20:33:04.83 ID:OumhvGLVO [9/11]
「大丈夫か」

「う……う、ん」

「無理するな、しばらくそうしてろ」

「……ぎゅぅ」

「……よしよし」

39 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/21(土) 20:35:39.42 ID:OumhvGLVO [10/11]
妹の髪から、甘い香りがする。
同じシャンプーのはずなのに、何が理由でここまで違うのだろう。
震える妹の肩に触れる。
きっと私はただの告白でも邪魔してしまっていたかもしれない。
臆病な妹。愛しい妹。
守れるのは私だけ、なんて言葉はエゴだろうか。

47 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/21(土) 23:57:39.63 ID:nizCjGOxO
「落ち着いたか?」

「……うん、もう平気だよ」

「今後は気を付けろ。今回は私がいたからよかったけど……」

「……」

「……?」

「……知ってた、から」

「へ?」

「お姉ちゃんがいるって、知ってたから」

48 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/22(日) 00:03:04.71 ID:g7r4Wkj4O [1/8]
顔を真っ赤にしながら、私を見つめる妹。
そんな妹が今しがた発した言葉に私は固まる。
今いる場所から私が先ほどいた場所は死角になっていて見えないはずだ。
それなのに知っていたとは、どういうことだろう。
と言うか知られていたとしたら、偶然ではなく追ってきていたこともバレていたのか。
自分の顔が確認出来ないが、目の前の妹のようになってないか心配だ。

49 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/22(日) 00:16:22.53 ID:g7r4Wkj4O [2/8]
「ここからは死角の場所に隠れていたのだが」

「……うん」

「なら何故私がいると……」

「……先輩が、言ってたから。多分お姉ちゃんが来るって」

「先輩……」

(あいつ、最初から知ってやがったのか。あとでぶっ飛ばす)

「……もし、いなかったらどうしてたんだ」

「信じてたから、考えてなかった」

「……」

「……」


50 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/22(日) 00:21:46.71 ID:g7r4Wkj4O [3/8]
妹がそんな風に思っていたとは思わなかった。そんな風に思って欲しいとは思っていたが。
必死に言葉を紡いだ反動か、妹は俯いて何も言わなくなった。
次は私が必死になる番なのだろう。
頬が熱い。
鏡なんて見なくても分かる。
姉妹揃って同じ顔だ。

51 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/22(日) 00:25:59.08 ID:g7r4Wkj4O [4/8]
「他に好きな奴が出来たら、いつでも言っていい。それまでは私を好きでいてくれ」

「……うん」

「大好きだ、妹」

「私も大好き、お姉ちゃん」


「……っ」

「……ん」



52 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/22(日) 00:31:39.68 ID:g7r4Wkj4O [5/8]
今後どうなるかは分からない。
ただ確実に言えることは、私は今後妹以外にこの感情を持つことなど出来ないだろうということ。
それが、私にとっても妹にとってもいい未来をもたらさないことを知っていても。
今はただ、このままでいさせて欲しい。
心を奪われたあの日から、ずっと願っていたことなのだから。

53 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/22(日) 00:33:34.19 ID:g7r4Wkj4O [6/8]
「……」

「……」

「……今日、部活は?」

「大会前だから、自由参加だよ」

「一緒に帰るか、どうせなら」

「……うんっ!」





54 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/22(日) 00:40:56.00 ID:g7r4Wkj4O [7/8]
その日は初めて妹と一緒に帰った。
初めて手を繋いだし、色々初めてばかりで目が回りそうだ。
帰り道に私たちは色々な話をした。
私が心配してくれてる事を最初から知っていた事。
そしてそんな私に上手く言葉を返せない自分が歯がゆかった事。
妹も似たような気持ちだったのだと知って、私はつい口元が緩むのを感じた。
似た物姉妹だ。
それだけの事も、今は感無量である。

57 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/22(日) 11:16:10.34 ID:JDjEebc3o [1/10]
「……ただいま」

「おかえりー、って。あれ?」

「ただいま、お母さん」

「珍しいわね、二人一緒になんて」

「……うん」

「今後はそうでもなくなるかも」

「あら?」

「……かも」

「あらあら?」

58 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/22(日) 11:28:26.66 ID:JDjEebc3o [2/10]
その日は珍しく、4人で食卓を囲んだ。
母は嬉しそうに私達を見つめ、そんな母を見て父は嬉しそうに笑い、そんな両親を見て私達もはにかんだ。
きっと仲良くなってくれた事を喜んでくれているのだろう。
実はそれだけじゃなかったりするのだが、今は余計な事を言わないでおく。
いつかは知られてしまうか、知らせないといけないのだろうけれど。
今はとりあえず、妹の笑顔を堪能しておこう。

59 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/22(日) 11:35:36.99 ID:JDjEebc3o [3/10]
「……ふぅ」

「お、お姉ちゃん?」

「ん、どうした」

「い、一緒に……入っても、いい?」

「……」

「……」

「……いいよ、おいで」

「お邪魔、します」

60 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/22(日) 11:43:29.41 ID:JDjEebc3o [4/10]
自分ちの風呂に入るのにお邪魔しますはないだろう、私は妹の頭を洗いながら小さく笑った。
妹はえへへと小さく笑い、私にされるがままだ。
二人で湯船に浸かり、向かい合う。狭い湯船なので少々窮屈だが、その窮屈さも今は悪い気分ではなく、むしろ好印象だ。
妹はどう思っているだろうか。
部位に差がある分だけ私よりも窮屈さを感じていないだろうか。
もっと話がしたい。口下手なのが口惜しい。

61 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/22(日) 11:59:44.06 ID:JDjEebc3o [5/10]
「……お姉ちゃん、いい匂い」

「そうか?自分じゃよく分からんな」

「……んーっ」

「く、くすぐったいぞ」

「ご、ごめん……」

「いや、謝らんでいい」

「へ?」

「こっちからもするからな」

「ひゃんっ……」

「……」

「……」

62 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/22(日) 12:04:39.57 ID:JDjEebc3o [6/10]
口下手なりに、色々話した。
運動部に入った理由は、私のように強くなりたかったとの事。
陸上部を選んだのは、やはりアイツがいたからとの事。
一緒の布団の中で、色々話した。
もちろん私からも話した。
私は強くなんてない事。
一目惚れの事。
気付けば外が明るくなるほどに話した。
今までの空白を埋めるように、たくさんたくさん。

63 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/22(日) 12:09:20.18 ID:JDjEebc3o [7/10]
「無事二人は結ばれたんだねー、よかったよかった」

「それについては感謝してる」

「おう、感謝しろ」

「感謝しているが、お前の態度が気に喰わない」

「あぁん?」

「……ありがとな」

「うむ」


「あ、先輩」

「アイツから聞いたよ。よかったね」

「はい、先輩のおかげです!」

「おかげ……ね」

「……?」

「私が言う事じゃないかもしれないけどさ。アイツの事、宜しく頼むよ」

「……はい、頑張ります」


「……」

「……さーて、コッペパンでも買いましょうかね」

64 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/22(日) 12:15:43.04 ID:JDjEebc3o [8/10]
次の休みは何をしようか、自然と頬が緩む。
妹も同じなのだろうか、同じであったら嬉しい。

今頃お姉ちゃんは何をしているだろう。
昨日の事をふと思い、私は顔を真っ赤にした。
お姉ちゃんも同じなのだろうか、そうだったら可愛いかもしれない。

妹よ。

お姉ちゃん。

大好きだ。

大好きだよ。

男「変な奴に懐かれた」少女「変な奴とは失礼な」

1 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/07(土) 19:29:42.33 ID:OaRMqAH/O
男「あー、疲れた……」

男(あいつ、人出が足りないからってこき使いやがって……)

男「……あっちー」

男(冷蔵庫にビール、残ってたっけな?この暑さの中買いに行くのだけは……)

男「……ん」

「……」

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2 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/07(土) 19:36:43.97 ID:OaRMqAH/O
男(見たことない子だな……そういや、隣に誰か越してくるって大家が言ってたっけか)

「……」

男(さて、ビールビールっと)

「……はふぅ」

男(……)

「……」

3 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/07(土) 19:46:46.60 ID:OaRMqAH/O
男「おい、お前」

「……?」

男「俺とお前以外に誰もいねーよ」

「……それって、まさか」

男「あ?」

「叫んでも誰も来やしねーぞ、ってやつですか?」

男「んなわけあるか、アホ。大家が飛んでくるわ」

男(……多分)

4 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/07(土) 19:53:42.23 ID:OaRMqAH/O
「では、なぜ私に声を掛けたんですか?」

男「何故って……こんな時間に子供が玄関前でうずくまってたら、大抵の大人は声掛けるもんなんだよ」

「そんなもんですか?」

男「そんなもんです」

「そんなもんなら仕方無いですね……よいしょ」

男(立つと小ささが際立つな、何歳くらいだ?こいつ)

5 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/07(土) 20:00:53.46 ID:OaRMqAH/O
「どうぞ、なんでもお聞き下さい」

男「とりあえず、名前から聞いておこうか」

「私は少女と申します。あなたは?」

男「ん、ああ。俺は男、この部屋の住人だ」

少女「お隣さんでしたか、今後よろしくお願い致します」

男「こちらこそ……じゃなくてだ」

少女「??」

男(なんか調子狂う奴だな……)

12 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/08(日) 19:23:05.88 ID:9AIj8hpGo
少女「質問は以上ですか?」

男「なわけあるか。まだ自己紹介しあっただけだろ」

少女「……ふむ」

男「そこ、お前の家なんだろ?」

少女「えぇ、そりゃまぁ」

男「じゃあなんでこんな時間に玄関先で座り込んでるんだ」

少女「……そうですね、話すと長くなりますが」

男(長くなるのか……)

少女「……じー」

男(……うん、まぁ。話しかけちまったのは俺だしな)

13 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/08(日) 19:37:48.40 ID:9AIj8hpGo
男「ちょっと待ってろ」

少女「……?」

男「……あー、あちぃ」

男(クーラー入れとこ……よっと)

男(見事にビールとつまみしか入ってねぇな……流石にこれ飲ますわけにもいかねぇよな)


男「おう、待たしたな」

少女「いえ、特には」

男「ほれ、飲め」

少女「……」

男(ここまで警戒されると結構ショックだな……)

14 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/08(日) 19:54:43.89 ID:9AIj8hpGo
男「まぁ別に、無理に飲めとは言わん」

男(俺はビール飲むけど……嫌味みたいになってねぇかな)

少女「……ごく、ごく」

男「……んぐ、んぐ」

少女「……けぷ」

男(あー、美味い……)

少女「……おいしくないですね」

男「……そりゃ悪かった」

少女「いえ、お構いなく」

15 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/08(日) 20:15:37.82 ID:9AIj8hpGo
男「それで、さっきの話の続きは?」

少女「さっきの話……」

男「話が長くなるとか、なんとか」

少女「あぁ、そうでした」

男(おいおい)

少女「私はここに、母と二人で暮らしていまして」

少女「普段は秘密の隠し場所に鍵を置いてあるのですが、どうやら今日は忘れてしまったらしく」

少女「それで、こうして座って母の帰りを待ってるわけです」

男「……ぐび」

少女「……んぐ、んぐ」

男「え、終わり?」

少女「はい、終わりです」

男「……」

少女「……」

16 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/08(日) 20:21:04.84 ID:9AIj8hpGo
男「いつぐらいに帰ってくるんだ?母親は」

少女「いつぐらい、なんでしょうか。いつも特に気にした事なかったですし」

男「ふーん……」

男(ビールぬるくなってきたな……そろそろ俺はこの辺で……)

少女「……水道水」

男「ん」

少女「味はともかく、助かりました。ありがとうございます」

男「おう、お構いなく」

17 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/08(日) 20:42:13.01 ID:9AIj8hpGo
男「あー、さっぱりした」

男(……もう8時か、夏は夜もあちいな)

男「……」

男「……ちら」

少女「……はふぁ」

男(まだ外にいるのか……)

男「……おい」

少女「……?」

少女「まだ何か、ご用ですか」

男(……余計なお世話な気がしてきた)

少女「……じー」

18 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/08(日) 21:00:48.62 ID:9AIj8hpGo
男(見た感じ、汗一つかいてないし……暑さ感じないとかいう可能性も)

男(……んなわけないか、アホか俺は)

男「あー、その、なんだ」

男「そこに座ってたら暑いだろ?」

少女「……まぁ、多少は」

男「母親が帰ってくるまでの間、うちに来ないか?」

少女「……」

男「変な意味はないぞ。玄関のとこで座ってれば、俺は近寄らん」

少女「……そこまで言われると、逆に」

男(あーあー、やっぱ余計な……)

少女「冗談です、厚意で言ってくださってるんですよね」

少女「お言葉に甘えさせていただいて、いいですか?」

男「最初からそう言えばいいんだよ」

男(笑うと結構印象変わるな、こいつ)

21 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/09(月) 02:14:59.68 ID:v+EtuOPXo
少女「……おじゃま、します」

男「おう、適当にくつろいでくれ」

少女「……んしょ」

男「……」

少女「……きょろ、きょろ」

男(……落ち着かんな、まぁ当たり前か)

男(なんか会話でもしてみるか……)

男「なぁ」

少女「……はい、なんでしょうか」

男「いつもこんな時間なのか?母親が帰ってくるの」

少女「どうなんでしょうか、時計をあまり見ないもので」

少女「今日はいつもより遅い、ような気はします」

男「ふーん……」

22 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/09(月) 02:24:50.70 ID:v+EtuOPXo
男「なら、お前はいつも一人で待ってるのか」

少女「そうなりますね。あの部屋に私が感じられない何かがいる可能性も否定はできませんが」

男「……なんじゃそりゃ」

男(母子家庭、ってやつか……)

男「お前、寂しくは……」

少女「……あ」

男「あ?」

少女「音が、しました」

男「……あぁ」

23 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/09(月) 02:30:53.06 ID:v+EtuOPXo
「……ありがとうございます、どうしているかずっと心配だったんです」

男「勝手にやった事ですんで」

「ほら、あなたもお兄さんにお礼を言いなさい」

少女「……ありがとうございます」

男(……嫌そうな顔してんな)

「後日、引っ越しのご挨拶も兼ねてお礼をさせていただきますね」

男「あ……その、お構いなく」

「では、また……」

男「あ、はい。ほんとお礼とか……」

男(……行っちまった)

男(幸薄そうな顔してたな……ま、色々苦労してんだろうな)

男「……寝るか」

24 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/09(月) 02:49:27.02 ID:v+EtuOPXo
男「……ふわーぁ」

「随分と大欠伸ね」

男「……色々あってな、昨日」

「色々って何さ」

男「具体的に話しても特に面白い話でもないが」

「そう言われると聞きたくなるのが人間でしょ」

男「……仕方ねぇな」


「ふーん、そりゃ大変だったね」

男「だから特に面白い話でもないと言っただろ……」

「……どうだか?」

男「……?」

25 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/09(月) 04:12:10.99 ID:v+EtuOPXo
男「……あー」

男(相変わらずあっちぃな……政府はもっと温暖化対策に力を入れるべきだ)

男「……ん」

少女「……あ」

男「……よう」

少女「……こんばんは」

男「こんばんは……じゃなくて、なんで俺の家の前にいるんだ」

少女「母がお礼に、と」

男「母本人はどうした」

少女「今日のお仕事は夜勤だそうで、お礼だけを持ってお待ちしてました」

男(……てことは、こいつは今日一人ぼっちなわけか)

男「……」

男「一緒に、食うか?それ」

少女「……」

男「……」

少女「……そちらの都合がよろしければ」

男「都合が悪かったらこんな事言わねーよ」

少女「そう、ですか……では」

男(カレーか、自分じゃあんま作らんからな。久しぶりだ)
29 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/09(月) 18:17:02.80 ID:v+EtuOPXo
少女「……お邪魔します」

男(別にわざわざ言わんでもいいのに)

少女「お台所、借りますね」

男「ん……火は使った事あるのか?」

少女「……手伝いくらいなら、多少」

男「危なっかしいな、俺に任せてお前は座ってろ」

少女「……それではお礼になってないのでは」

男「俺がお礼されたと思ってりゃいいんだよ」

少女「……納得いきませんが、理解は出来ます」

男「ほれ、ジュースでも飲んでろ」

30 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/09(月) 18:36:15.69 ID:v+EtuOPXo
少女「……ごく、ごく」

男(おー、いい香りだ)

少女「……あなたは」

男「ん?」

少女「一人暮らし、されてるんですか」

男「誰かと暮らしているように見えるか、この部屋」

少女「……すいません」

男「別に謝る必要はないぞ……よし、このぐらいでいいか」

男(米は確か冷凍のがあったよな……)

男「待たした」

少女「いえ、そこまでは」

31 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/09(月) 18:55:45.92 ID:v+EtuOPXo
男「遠慮なく食えよ」

少女「……元々そこまで大食いではないのですが」

男「いや、無理して食わんでもいいが」

少女「……いただきます」

男「いたきだきます」

少女「……もぐ、もぐ」

男(……甘口、か。多分こいつの為に作ったカレーなんだろうな)

少女「……おいしい、ですか?」

男「おう、美味いぞ」

少女「……にこ」

男「……」

男「お前、普段からもう少し笑った方がいいと思うぞ。その方が、いい感じだ」

少女「……」


少女「…・・これはいわゆる、口説き文句と言うやつですか?」

男「アホ言え」

32 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/09(月) 19:27:36.02 ID:v+EtuOPXo
少女「……ご馳走様でした」

男「ふー、久々に腹一杯食べた」

少女「……後片付けくらいは、させてください」

男「おう、そこはお言葉に甘えようか」

男(ビールビールっと……)

少女「……ごし、ごし」

男(……つまみうめぇ)

少女「……終わりました」

男「おう、お疲れさん」

少女「……」

男「……」

男「おい」

少女「……?」

33 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/09(月) 20:01:52.60 ID:v+EtuOPXo
男「まだ何か用があるのか?」

少女「いえ、無いですが」

男「だったら、いつまでいる気なんだ」

男(男の一人暮らしだぞ、一応)

少女「……私がいると、迷惑ですか?」

男「いや、迷惑と言うか……なんと、言うか」

少女「……じー」

男(急に警戒心が減ったな、やっぱりよく分からん奴だ)

34 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/09(月) 20:56:25.07 ID:v+EtuOPXo
男「12時過ぎるまでだからな」

少女「……ふむ」

男(……理由は分からんでもないから、追い出しにくい)

少女「……あの」

男「ん、なんだ」

少女「……ありがとう、ございました」

男「改まって急になんだ」

少女「……」

男「……?」

少女「……ぐぅ」

男(寝言、だったのか今の。にしちゃ……)

男(じゃなくて、何寝てくれちゃってんだコイツ)

35 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/09(月) 21:29:25.73 ID:v+EtuOPXo
少女「……すぅ……すぅ」

男「おい、起きろ。おい……」

少女「……」

男(……ダメだ、完全に寝入ってる)

男(ちょいと確認してくるか)

男「……ふむ」

男(隣の部屋に行くだけでもちゃんと戸締りするんだな、感心だが……)

男「さて、どうしたものか」

36 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/09(月) 22:30:58.84 ID:v+EtuOPXo
男(とりあえず、ベッドまで運ぶか)

少女「……むにゃ」

男(……軽いな。事務所の荷物よりも、は言い過ぎか)

少女「……」

男「……よいしょっと」

男(さて、俺はどこで寝るかな……)

男「……?」

少女「……」

男(裾をギュッと握られては、動けんのだが)

少女「……ぐぅ」

男「……はぁ」

男(今から言い訳、考えておいた方がよさそうだな……)

39 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/10(火) 01:55:29.55 ID:T7r5zg40o
少女「……むにゃ、むにゃ」

少女「……くぁ」

少女(……私、寝ちゃってた?)

少女「……じー」

男「ぐがー……」

少女(……だらしない寝顔ですね)

男「すぴー……」

少女「……なで、なで」

男「むにゃ……」

少女「……ふふ」

40 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/10(火) 02:14:12.45 ID:T7r5zg40o
男「……ん」

男「ふわーぁ……」

男(いつの間にか寝ちまってたのか)

男(今何時だ……ん?)

『ありがとうございました。目が覚めたので帰ります』

男(……母親が帰ってくる前に帰れたんだろうか)

男「おっと、こんな時間か。急がんとな」

41 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/10(火) 02:33:46.33 ID:T7r5zg40o
「おっす、おはよう」

男「おっす」

「今日は面白い話、ないの?」

男「そう毎日何かあってたまるかよ」

「その反応は、何かあったんだね」

男「……まぁな」

「またお隣の少女関連かな?」

男「そうだが、何故そう思った」

「昨日の今日だし、なんとなくね。で、どんなことがあったの?」

男「……話さないといけないのか」

「暇だしね」

男「俺は暇じゃない」

「わくわく」

男「……チッ」

42 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/10(火) 02:45:15.50 ID:T7r5zg40o
「へー、そんなことが」

男「子供は何考えてるのか分からん」

「大人だからって分かるもんでもないんじゃない?」

男「子供よりは幾分かマシだ」

「へぇー」

男「んだよ」

「んーん、別にー」

男「お前も作業を手伝え。何が暇だ」

「はいはーいっと」

43 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/10(火) 02:54:43.98 ID:T7r5zg40o
男(今日は早く終わりそうだな……)

「ねぇ、今日さ」

男「ん、どうした」

「キミの家、行ってもいい?」

男「……なんだ、急に」

「話しを聞いてたら、その女の子の事が気になっちゃって」

男「お前、そういう趣味が……?」

「……バーカ」

男「??」

「とりあえず、分かったらさっさと作業終わらせなよ」

男(だったら手伝えっての……)

44 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/10(火) 03:18:04.87 ID:T7r5zg40o
「いやー、事務所を出るとあっちぃね。この時間でも」

男「一旦家に帰ったほうがいいんじゃないか」

「まぁ最悪、キミの家でシャワー借りるよ」

男(本気で言ってんのかこいつ……)

男「……ん」

「……んー?」

少女「……あ」

男「む」

「お?」

48 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/11(水) 01:13:57.29 ID:izQfL36co
男「なんだ、またなのか?」

少女「……の、ようです」

(ふーん、この子が噂のね)

「はじめまして、こんばんは」

少女「……じー」

(心なしか、睨まれているような?)

男「こいつは俺の職場の同僚だ。アホだがそこまで害はない」

「微妙にひどい紹介じゃない?」

男「全面的にひどく紹介したつもりだが」

少女「……お友達、ですか?」

男「まぁ、かなり好意的に解釈するとそんなとこか」

49 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/11(水) 01:27:13.72 ID:izQfL36co
少女「……失礼しました」

「いえいえ、お構いなく」

男「まぁ、知らない奴に対しての反応としちゃ間違った方じゃないから安心していい」

少女「……ぺこり」

(可愛いなぁ、こりゃもしかしなくても……)

男「じゃ、帰れ」

「へ?」

男「用は済んだだろ」

「まだシャワー借りてないよ」

男「本気で言ってたのかそれ……」

50 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/11(水) 01:31:18.05 ID:izQfL36co
男「着替えどうすんだよ」

「キミの借りちゃダメ?ちゃんと洗って返すよ」

男「そういう問題かよ……」

少女「……」

「……ダメ?」

男「ダメだ、さっさと帰れ」

「ちぇーっ、帰りますよっと……それじゃ、またねー」


男「……」

少女「……」

52 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/11(水) 02:07:50.09 ID:izQfL36co
男(まったく、何しに来たんだあいつ……)

少女「……おっきかった」

男「は?」

少女「なんでもありません」

男「……ならいいんだが」

少女「いや、なんでもないわけではないかも……?」

男(また訳の分からんことを言い始めやがって)

少女「……暑さで頭が回りません」

男「……」

少女「……暑い、です」

男「分かった分かった……」

53 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/11(水) 02:35:02.83 ID:izQfL36co [5/8]
少女「……はふ」

男(随分と遠慮がなくなったな、コイツ)

少女「今日はお酒、飲まないんですか?」

男「ん、あぁ」

男(余計な奴が引っ付いてきたせいで買い忘れただけだがな)

少女「……あの」

男「ん、どした」

少女「……」

男「……おい」

少女「……上手く言葉が出てこない、です」

男「なんじゃそら」

54 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/11(水) 02:44:45.01 ID:izQfL36co [6/8]
少女「ですから、その……ですね」

男(こいつ用にと思って買ってきたもんだったが)

少女「……あっと……ええと」

男(久々に飲むとオレンジジュースも悪くねぇな)

少女「……マジメに聞いてますか?」

男「なんも話してねぇだろ」

少女「ですから……」

男「……ん?」

男「わりぃ、来客だ。ちと待っててくれ」

少女「……むすー」

55 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/11(水) 02:52:20.30 ID:izQfL36co [7/8]
「こんばんは、お隣さん」

男「あ、どうも。こんばんは」

「あの子、こちらにいらしてませんか……?」

男「あぁ、来てますよ」

「よかった……いつもの場所に鍵が置きっぱなしだったから、心配しちゃって」

男(俺のとこにいたから安心、ってのもおかしい気もするがな)

男「……ん?」

「……この前のカレーどうでした?」

男「へ?あ、はい。美味しかったですよ」

少女「……とてとて」

「それはよかったです、あの子から話を聞いた時は心配で……」

少女「……お母さん、帰ろ」

「はいはい、今行きますよ……では、これで」

男「は、はぁ……」


男(なーんか、話がおかしかった気がするが……)

男(まぁいい、寝るか)

59 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/11(水) 16:08:32.63 ID:izQfL36co [9/11]
男「……ん」

男(朝……いや、もう昼か?どうも休みってのは時間の感覚が掴めんな)

男「とりあえず食いもん買ってくるか」

男「む?」

少女「……あ」

男「おつかいか、偉いじゃないか」

少女「今日はお仕事、お休みなんですか」

男「ま、そんなとこだな」

少女「……惣菜ばかりでは、体を壊しますよ」

男「この生活を続けてるが幸い俺は健康体だ」

少女「……むー」

男(な、なんで不機嫌になる)

60 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/11(水) 16:10:06.32 ID:izQfL36co [10/11]
少女「……では、ここで」

男「……」

少女「とてとて……」

少女「……っ?」

男「どうせ帰る方向一緒なんだ、持ってやるよ」

少女「……泥棒は犯罪です」

男「料理しねぇのに食材ばっか盗んでどうすんだ」

少女「……ありがとう、ございます」

男「うむ、それでよろしい」

61 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/11(水) 16:20:01.19 ID:izQfL36co [11/12]
少女「……重くないですか?」

男「この程度、慣れてるよ」

少女「……」

男「おい、歩きにくいだろ」

少女「我慢してください、これぐらい」

男「いや、なんでだよ」

少女「……」

男(……まったく、子供は分からん)

62 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/11(水) 16:35:27.45 ID:izQfL36co [12/12]
男「ほいよ、ここまでくればいいだろ」

少女「……こく」

男(この程度とは言ったものの肩が……歳か?なんて言いたかねぇな)

少女「ただいま、お母さん」

「あら、早かったわね……」


男「……さて、飯飯っと」


男「……おっと、もうこんな時間か」

男(一日中家でゲームだなんて、実に贅沢な休日の使い方だ)

男「ん?」

男(誰だ、こんな時間に……)

63 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/11(水) 16:38:27.01 ID:izQfL36co [13/13]
少女「……」

男「おう、どした。また親がいねぇのか」

少女「……親はいます。片親ですけど」

男「いや、そう言う意味の言葉じゃなくてだな……」

少女「お昼のお礼を、言ってなかったので」

男「ん、あぁ」

少女「ありがとう、ございました」

男「はい、どういたしまして」

少女「……それでは」

男(え、そんだけ?)

少女「……さようなら」

男「あ、おい……」


男「なんだったんだ、今の」

64 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/11(水) 16:45:07.63 ID:izQfL36co [14/15]
「やぁ、おはよう」

男「おう、おはよう」

「いつにも増して不景気なツラしてるね」

男「……ある程度は生まれつきだ」

「また件の少女関連?」

男「いや、あいつとはしばらく会ってない」

「しばらくってどのぐらい」

男「そこ重要か?」

「それなりに」

男「……」

男(あの謎のあいさつ以降、だなそういや)

65 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/11(水) 16:50:42.89 ID:izQfL36co [15/16]
「結構な期間音沙汰なしなんだね、また引っ越したとか?」

男「いや、母親の方を見かけるからそれはないだろうな」

「ってことは……」

男「ってことは、なんだよ」

「いや、なんでも」

男「なんだよそれ」

「キミが不景気ヅラしてる理由が分かって満足だし」

男「どこをどう聞いて理由が分かったんだ」

「さて、どこでしょう?」

男「……ケッ」

66 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/11(水) 17:07:05.14 ID:izQfL36co [16/17]
「あ、そういや聞いた?」

男「何をだよ」

「今日新しいバイトの子、入るらしいよ」

男「ほう、これでやっと俺の重労働も軽減されるのか」

「残念、女の子らしいです」

男「……はぁ」

「所長好みの女の子とかなんとか」

男(所長の趣味なんて知るか……)

67 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/11(水) 17:16:51.54 ID:izQfL36co [17/17]
「もうそろそろ来るって聞いてたんだけど……」

男「俺は作業に戻るぞ、お前が対応しろ」

「えー、めんどくさいなぁ……っと、噂をすれば」

「はいはい、今出ますよー」

男(というか、所長って普段何やってんだ?俺も面接の時一回会ったきりな気がするぞ)

「おーい、一応新人くんに挨拶ぐらいしときな」

男「へいへい……」

男「……」

少女「……」


少女「……初めまして?」

男「いや、なんでだよ」

68 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/11(水) 17:22:18.63 ID:izQfL36co [18/19]
「キミが子供子供言うから、完全に勘違いしちゃってたよ」

男(まさか高校生だったとは……)

「受験とかで大変だったんだよねー」

少女「……はい、まぁ」

(ま、それだけじゃないんだろうけど)

男「……」

男「まさか、新人がこいつだって知ってたんじゃあるまいな?」

「……まっさかー?」

少女「……まっさかー」

男「……お前らなぁ」


男「ったく、仕事をなんだと……」

少女「……あの」

男「あん?」

少女「……これから宜しくお願いします、先輩」

男「お、おう?」

「ニヤニヤ」

男「……まったく、変な奴に懐かれたもんだ」

少女「変な奴とは失礼な」

「変な奴はキミだろ?」

男(もう仲良しかよ、お前ら)

友「先輩と付き合ってるって言ってなかったっけ?」女「……うん」

1 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/10/31(土) 02:50:08.06 ID:KMJFxDFpo [1/7]
友「ならどうして、ここにいるわけ?」

女「……?」

友「いや、なんでこっちがおかしいみたいになってんの」

女「……いつも一緒に、食べてる」

友「いやまぁ、そうだけどさ……普通は付き合い始めって言ったらこう」

『先輩、あーん』『うん、おいしいよ。ありがとう』『キャッキャッ』

友「とかやるのが定番なんじゃ?」

女「……」

友「……」

女「……きゃっきゃっ」

友「悪かった、結構くるものがあるからやめてくれ」

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2 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/10/31(土) 02:53:25.46 ID:KMJFxDFpo [2/7]
女「……そういうもの、なのかな」

友「そういうもんなんじゃないかね」

友(よく知らんけど……)

女「……明日から頑張って、みる」

友「おう、その調子その調子」

女「……ありがと、ね」

友「いや、感謝されるほどの事は言ってないって」

女「……そう?」

友「そうそう」

女「……」

友(こんな調子で大丈夫なのかね……いや、それは言うまい)

3 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/10/31(土) 03:06:50.01 ID:KMJFxDFpo [3/7]
女「……先輩」

先輩「ん、どうかしましたか?」

女「……あーん」

先輩「あーん……?」

女「……」

先輩「……」

友「……オイ」

女「……?」

友「口を開けさせておいて、何をボーッと見てるんだ」

女「……どれをあげたらいいかなって、思って」

友「んなもんどれでもいいんだよ!」

女「……どれでも……どれ、でも……?」

友「……」

4 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/10/31(土) 03:18:11.60 ID:KMJFxDFpo [4/7]
先輩「……ぷっ、あははっ」

女「……せん、ぱい?」

先輩「おっと、失礼……あなた達の漫才が面白くて、つい」

友(この人、こんな感じで笑うんだな……)

先輩「改めて、いただいてもよろしいですか?」

女「……あ、えと」

先輩「その卵焼き、おいしそうですね」

女「……どうぞ」

先輩「もぐもぐ……うん、おいしい」

先輩「それでは、こちらからも……はい、あーん」

女「……?」

女「……あーん……ぱく」

先輩「どうですか?購買のカレーパンは」

女「もむもむ……おいしい、です」

女「……んぐ」

5 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/10/31(土) 03:23:46.93 ID:KMJFxDFpo [5/7]
女「……もう一口、いいですか?」

先輩「ふふ、もう一口と言わず全部どうぞ」

女「……そんな、悪いです」

先輩「それでは、もう二口ほどそちらのお弁当をいただいても?」

女「……もう二口と言わず、どうぞ」

先輩「それは少し私が得をし過ぎではないでしょうか?」

女「……元からその、つもりで」

先輩「後日お礼を考えておきます、楽しみにしておいてください」

女「……?」


友(……高校に上がってすぐに『恋がしてみたい』なんて突然言うからどうなるかと思ってたが)

友(心配することなんて全くなかったみたいだな)

友(……こうなる事は分かりきってたことだろ、何を今さらざわざわしてるんだ)

6 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/10/31(土) 03:27:44.01 ID:KMJFxDFpo [6/7]
女「……」

クイ クイ

友「ん、どした」

女「……だい、じょうぶ?」

友「大丈夫って……何が」

女「……顔色、よくない」

友「気のせいだっての」

女「……カレーパン、食べる?」

友「別に腹が減ってるわけじゃ……」

友「……貰うよ、ありがとう」

女「……にこ」

友「先輩、いただきます」

先輩「それは差し上げたものですので。どうぞどうぞ」

友(……うめぇ)

17 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/01(日) 01:57:59.28 ID:IQMUorgBo [1/14]
友(あー、疲れた……補欠なんだから、ここまで走らせんでも……)

友「……ん?」

女「……」

友「帰宅部がなにしてんだ、こんな所で」

女「……先輩を、待ってる」

友「……あぁ、生徒会だっけか」

女「……コク」

友(こんな時間までやってのか、生徒会って)

女「……」

友「一緒に帰ろうとか、約束してるのか?」

女「……あ」

友「おいおい……」

19 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/01(日) 02:15:04.83 ID:IQMUorgBo [2/14]
女「……」

友「……先輩の事、好きになってきたか?」

女「……?」

友「いや、こうして待ってるじゃん」

女「……まだ、よく分からない」

友「よく分からない?」

女「……うん」

女「……よく分からない、から」

女「……いつもと同じこと、してみようかと」

友「……ふぅん」

友(昨日みたいな事になるくらいなら、先に帰っちまおうかな……)

20 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/01(日) 02:22:30.77 ID:IQMUorgBo [3/14]
女「……あ」

友「む?」

先輩「……おやおや」

先輩「記憶違いでなければ、あなたは帰宅部だったはずですが」

女「……はい」

友(間が悪いな、言い出しづらくなった)

先輩「……ふむ少しお手を拝借」

女「……?」

友「……じー」

23 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/01(日) 02:36:56.58 ID:IQMUorgBo [5/14]
先輩「結構待っていたんですね、こんなに冷たくなって」

女「……ご、ごめんなさい」

先輩「謝って欲しかったわけでは無くて……」

先輩「……そうだ、毎日は難しいと思いますが」

女「……携帯?」

先輩「私のメールアドレスです。後でメールを送っておいてください。次から時間があるときはこちらからメールしますので」

女「……はい」

友(二人が話しているうちに……っ)

友「……っ」

女「……?」

友(ガッチリ袖がホールドされて……)

友「せ、折角の先輩と二人きりじゃないか。お邪魔虫は……」

先輩「ん、私は別に構いませんよ」

友「……」

24 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/01(日) 02:46:34.43 ID:IQMUorgBo [6/14]
女「……」

先輩「……」

友「……」

友(……な、何か喋ったりしないのか?)

女「……」ふらっ

友「あ、あぶ……」

先輩「おっと、危ないですよ」

女「……あ、ありがとうございます」

先輩「いえいえ」

友(……やっぱムリにでも帰ればよかったか)

25 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/01(日) 02:54:58.25 ID:IQMUorgBo [7/14]
女「……私は、ここで」

先輩「ほう、ここがあなたの家でしたか。覚えておきますね」

女「……また、明日」

友「おう、また明日」


友「……」

先輩「……」

友「先輩の家、こっちの方向なんですか」

先輩「いえ、完全に逆方向ですが」

友「ならなんで……」

先輩「そもそも最初から逆方向ですから、ご心配なく」

友「いや、そうじゃなくて……」

先輩「本音を言えば、少し二人でお話がしたかったんです」

友「……」

先輩「そう怖い顔しないでください、変な意味はないですから」

33 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/01(日) 20:09:55.19 ID:IQMUorgBo [9/14]
友「……」

先輩「……」

友「……話がしたいんじゃ、なかったんですか」

先輩「ん、あぁ。そうでしたね」

先輩「あの人、後輩さんの好きな食べ物をお聞きしてもよろしいですか?」

友「……へ?」

先輩「何か問題がありましたか?」

友「いえ、別に問題は……いちご大福、ですけど」

先輩「ほう、いちご大福ですか。覚えておきましょう」

友(……わざわざ二人きりにならないと聞けない事か?)

34 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/01(日) 20:31:33.06 ID:IQMUorgBo [10/14]
友「……今度はこちらから、いいですか」

先輩「はい、どうぞ」

友「あいつの方から、告白したんですよね」

先輩「そうですね、あの人から聞きましたか」

友(……あの人って言い方、なんだかな)

友「なんで承諾したんですか?初対面に等しかったと思うんですけど」

先輩「見た目で即決でした」

友「……じとー」

先輩「あの人の容姿ならそれでも変ではないと思いますが?」

友「……まぁ、そうですけど」

先輩「でしょう?ふふ」

友「……」

35 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/01(日) 20:39:44.27 ID:IQMUorgBo [11/14]
先輩「まぁ、冗談はここまでにしておいて」

友(冗談か本気か判別付かん人だ)

先輩「と言っても、半分は冗談じゃないんですが」

友「どっちだよ!」

友「……あ」

先輩「構いませんよ、普段の口調で。その方が話しやすいのでしたら」

友「そういうわけには……」

先輩「おや、残念。もっと親しみを持っていただいて結構ですけど」

友「……話の続き、してください」

先輩「はいはい」

36 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/01(日) 20:52:28.18 ID:IQMUorgBo [12/14]
先輩「あなた達から見れば、私の方は初対面だったと思いますが」

先輩「私の方は、よくあなた方を見かけていたんですよ」

友「そうなんですか?」

先輩「立ち入り禁止の屋上へ向かうための踊り場は、生徒会室のある階の踊り場でもありますから」

友(あそこ、下から見えてたのか)

先輩「最初は注意しようかと思っていたのですが、談笑しているお邪魔をしては悪いなと」

友(それでいいのか生徒会長)

先輩「まぁ、そういう訳でして。突然告白された時はもちろん驚きましたけど」

友「……」

先輩「まだ何か、ご不満が?」

友「……別に、元からご不満なんて」

友(あいつがご不満ないなら、口を挟む事でもないし)

37 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/01(日) 21:04:07.13 ID:IQMUorgBo [13/14]
友「先輩」

先輩「はい?」

友「家、ここなんで」

先輩「あぁ、ではここでお別れですね」

友「……先輩」

先輩「はい?」

友「あいつの事、好きですか?」

先輩「……あなたのご期待に添えるかは分かりませんが、好きですよ」

友「……」

先輩「では、また学校で」



友「……ご期待ってなんだよ、クソッ」

39 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/02(月) 01:30:05.55 ID:8tceBaYho [1/17]
友(……先輩もあいつが好きで、あいつも先輩が好きで)

友(それをあいつが望んだなら、それでいい……はずなのに)

友(なんでこんなにモヤモヤしてるんだろうか)

友「……ふぅ」

友(恋がしてみたい、なら……)

友(……バカみてぇ、さっさと寝ちまおう)

40 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/02(月) 01:42:49.03 ID:8tceBaYho [2/17]
友「……ふわーぁ」

友(結局、全然眠れなかった……)

女「……欠伸、おっきい」

友「ん、あぁ……少し、寝不足で」

女「……大丈夫?」

友(お前と先輩のせいだ、なんて言ったらどんな反応するんだろう?)

女「……?」

友(……なんて、バカな事考えてないで)

友「たまたま寝付きが悪かっただけだ、そんなに心配するな」

女「……そう?」

友「うむ」

女「……あ」

友「ん?」

女「……先輩、走ってる」

友(体育の時間被ってたのか)

41 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/02(月) 01:57:13.57 ID:8tceBaYho [3/17]
女「……先輩、足速い」

友「あぁ、ぶっちぎりだな……」

女「……じー」

友(あの横顔は誰が見てもかっこいいわな……)

女「……」

友「声援でも、送ってやれば?」

女「……んー」

友「『先輩がんばれー』とかさ」

女「……せんぱい、がんばれー」

友(そんな小さな声じゃ聞こえ……)


先輩「……――」


女「……先輩、手振ってる」

友「……振替してあげれば?」

女「……ん」

友(ほんと、完璧でヤになるね)

友(……こんな事考えてる自分は、もっとヤだけどさ)

42 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/02(月) 02:16:36.11 ID:8tceBaYho [4/17]
先輩「……おや」

女「……?」

先輩「どうも、先程ぶりですね」

女「……ぶりです」

先輩「今日は御一人ですか?」

女「……一緒が、よかったですか?」

先輩「いえ、そんなことはないですよ」

女「……そう、ですか?」

先輩「ただ、珍しい事もあるものだなと思いまして」

女「……」

先輩「……」

先輩(……少し嘘を付いて申し訳ありません。こういう時は一緒の方が助かります)

43 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/02(月) 02:35:05.27 ID:8tceBaYho [5/17]
女「……先輩」

先輩「はい、なんでしょう」

女「……難しいかお、してます」

先輩「そうですか?そうだとしたら、無意識です。気にしないでください」

女「……じー」

先輩(私の事よりも、気にすることがあると思うのですが)

女「……」

先輩(ふふ、しばらくはお付き合いしましょう)

友「……じー」

先輩(その方が面白そうですし)

46 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/02(月) 18:46:39.55 ID:8tceBaYho [7/17]
女「……あ、おかえり」

友「おう、ただいま」

先輩「おかえりなさい」

友「……どうも」

女「……大丈夫?」

友「だから大袈裟だって」

先輩「何があったか、お聞きしても?」

女「……急に、貧血で倒れちゃって」

先輩「おや、それは大変ですね」

友(誰のせいだと……って、完全に八つ当たりだなそれは)

女「……ほんとに、大丈夫?」

友「ガキじゃねーんだから、いちいちそんなに近寄らんでよろしい」

47 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/02(月) 18:53:51.87 ID:8tceBaYho [8/17]
先輩「……さて、それでは私はこの辺で」

友「え?」

女「……?」

先輩「どうもお邪魔虫なようですし」

女「……そんな事、ないですよ」

友「そうですよ、この場合むしろお邪魔虫なのは……」

女「……」

友「むっ……」

先輩「おや」

女「……虫なんて、ここにはいません」

友(久々に見たな、コイツが眉をひそめるところ)

先輩「……」

48 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/02(月) 18:56:19.57 ID:8tceBaYho [9/17]
先輩「すいません、語弊を生む言い方をしてしまいましたね」

女「……?」

先輩「そろそろメンバーも集まっている頃でしょうし、生徒会室へ向かおうかと思いまして」

女「……あ。す、すいません」

先輩「いえいえ、見たことの無い顔が見れて満足です」

女「……あぅ」

先輩「それでは、また」

女「……はい、また」

友「……」

49 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/02(月) 19:56:13.24 ID:8tceBaYho [10/17]
友「そろそろ離してくれないか?」

女「……だめ」

友「本当に大丈夫だって」

女「……ほんとに、ほんと?」

友「ほんとにほんと」

女「……そっか」

友(……そんな顔、するなよ)

友(そんな顔、されると……)

女「……い、いたいよ」

友「っと……わ、悪い」

女「……じー」

友「あはは、は」

52 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/02(月) 21:07:19.92 ID:8tceBaYho [12/17]
先輩「……おや」

友「あ、先輩」

先輩「これまた珍しいですね、お一人ですか?」

友「……別にいつも一緒にいるわけじゃ、ありませんし」

先輩「確かに、それもそうですね」

友「先輩こそ、なんでこんな所に一人でいるんですか」

先輩「その理由はあなたにも分かっているのでは?」

友(……そういや、居残りさせられるとかなんとか言ってたっけ)

友「そういう事なら、ごゆっくり……」

先輩「あぁ、暇だ。待ってる間、凄く暇だなぁ」

友「……」

先輩「……」

53 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/02(月) 21:19:59.27 ID:8tceBaYho [13/17]
先輩「いやぁ、助かりました。優しい後輩を持って嬉しいです」

友(適当に切り上げて帰ろ……出来ればあいつが来る前に)

先輩「難しい顔をしてますね、あの人が心配していましたよ」

友(……そんな話までしてるのか、あいつ)

友「まぁ、色々と」

先輩「……色々と、ですか?」

友「そりゃまぁ、色々と」

先輩「ふむ、なるほど……」

54 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/02(月) 21:35:13.74 ID:8tceBaYho [14/17]
友「……なんかやたらと突っかかって来ません?先輩」

先輩「そうですか?こちらからすると、逆の意見ですが」

友「……そりゃすいませんでした」

先輩「いえいえ、お構いなく。あなたの事も好きですから」

友「……は?」

先輩「おっと、また語弊を生みそうな言い方をしてしまいました。これは人として、みたいな方の意味です」

友「いやまぁ、そりゃ……そうでしょ」

先輩「いやー、しかし寒いなぁ」

友(な、何を考えてるんだこの人は……)

55 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/02(月) 21:52:41.62 ID:8tceBaYho [15/17]
友「……先輩は、本当にあいつの事が好きなんですか?」

先輩「そうじゃなきゃ、こうして寒空の待ち合わせなんてしないと思いますけど」

友「……」

先輩「そう言えばこの前もそんな事を聞かれましたね、どうしてそんなに気になさるのでしょうか?」

友「そ、それは……」

先輩「……じー」

友「……ぐ」

先輩「答えにくいようなら質問を変えましょうか。もし仮に好きじゃない、と答えたら……」

先輩「あなたはどうするつもりなんですか?」

友「……」

56 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/02(月) 22:08:09.97 ID:8tceBaYho [16/17]
友「……別れさせます」

先輩「親友のために、ですか?」

友「……」

友(親友の、ために……そうだ、そう。親友、のため)

先輩「そうですか、それなら心配いりませんよ」

友(親友の、ため?)


友「……先輩」

先輩「はい、なんでしょうか」

友「失礼を承知で、申し上げます」

先輩「もったいぶらずどうぞ?」


友「あいつと、別れてください」

60 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/03(火) 14:41:48.18 ID:1yysNqJeo [1/11]
先輩「……」

友「突然おかしい事を言っている事は分かっています、ですが……」

先輩「いいですよ」

友「……え」

先輩「そこまで言われてしまっては仕方ありません。どうやら私はあなたの御眼鏡にかなう人間ではなかったようだ」

友「そんな、あっさりと……」

先輩「別れてくださいと言ったのはどこのどなたですか?」

友「え、その……」

先輩「じゃあ、やっぱりこのままで行きましょうか」

友(今ならまだ……)

友「……だ、ダメです……わ、私の方があいつの事、好きですからっ!」

友「……あ」

61 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/03(火) 14:43:12.18 ID:1yysNqJeo [2/11]
先輩「……」

友「……――」

先輩「だ、そうですよ?」

友「え……」

女「……ひょこ」

友「な……あ……?」

友「お、お前……ずっとそこに、いたのか?」

女「……ぶるぶる」

先輩「正確に言うと、私が言って待ってもらっていたんですが」

友「なんでそんなことを……」

先輩「そりゃもう、可愛い彼女から相談を受けて協力しない人間はいないでしょ」

友「相談って……うおっと」

女「……ぎゅー」

62 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/03(火) 14:44:26.18 ID:1yysNqJeo [3/11]
先輩「まぁ要は、そういう事ですよ」

友「……お前、恋がしてみたいって言ってたじゃんか」

女「……うん」

友「だから先輩と、だったんじゃないのか?私じゃ、ダメだから……」

女「……違った、みたい」

先輩「情けない話ですが、どうやらあなただけでなく両方の御眼鏡にかなわなかったようで」

友「ほんとにいいのか、私で」

女「……あなたが、いい」

友(……こんな簡単な事を、ずっと悩んでたのか私は)

63 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/03(火) 14:45:13.77 ID:1yysNqJeo [4/11]
友「……先輩は納得してるんですか、それで」

先輩「納得するもなにも、最初からそういう話でしたし」

女「……ごめんなさい、先輩」

先輩「謝らないでください。十分楽しみましたよ、私は」

先輩「まぁ、強いて言うなら……心変わりしないうちにもう少し進んでおくべきでしたか」

女「……す、進んで……」

友「なんかヤな言い方しますね……」

先輩「ははは、負け惜しみだと思ってください……さて」

先輩「そろそろ本格的に身体が冷えてきましたので私はこの辺で」

友「先輩」

先輩「はい、なんでしょうか」

友「ありがとうございました」

女「……ありがとう、ございました」

先輩「ははは、どうも」

64 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/03(火) 14:45:45.76 ID:1yysNqJeo [5/11]
先輩(……ありがとう、ですか)

先輩(嘘でもキスぐらいはしたと言っていた方が、面白い反応が見れたかもしれません)

先輩(この気持ちも恋……の一種なのでしょうか)

先輩「ははは、笑うしかありませんねこれは」

「せ、先輩っ!」

先輩「……?」

「ず、ずっと前から好きでした!付き合ってくださいっ!」

先輩「……ふむ」

先輩「では、キスから始めましょうか」

「え、えぇっ!?」

65 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/03(火) 14:46:15.05 ID:1yysNqJeo [6/11]
友(……結局、本心がよく分からない人だった)

女「……寒い」

友「ん、あぁ。私達も急いで帰るか」

女「……ぴと」

友「お、おい……そんなに引っ付くと歩きにくいだろ?」

女「……これからはもっと、引っ付く」

友「しょうがねぇな……」

女「……」

友(結局いつもとほとんど変わらねぇな……)

女「……?」

友(……いや、大きな一歩か)

66 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/03(火) 14:48:05.29 ID:1yysNqJeo [7/11]
女「……ねぇ」

友「んあ?」

女「……少し先に、進んでおく?」

友「へ……な、何言ってんだ?」

女「……心変わり、しちゃうかも」

友「な、何言ってんだ!」

女「……じー」

友「……お前、先輩の性格少し移ったか?」

女「……そう?」

友(やれやれ……)

67 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/03(火) 14:48:35.96 ID:1yysNqJeo [8/11]
友「むー……」

女「ぁ……ん……」

友「……」

女「……」

友「……こ、これでいいか?」

女「……これが、恋?」

友「ちょ、ちょっと違う気もする……」

68 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/03(火) 14:49:03.99 ID:1yysNqJeo [9/11]
友(その後、先輩がやたらとモテているという話題を聞いた)

友(なんだか色んな子に手を出しているとかなんとか……その方向に楽しみとやらを見出したのだろうか)

友(やっぱりあの人は、なんというか苦手だ」

女「……じー」

友「ん、どうした?」

女「……また何か、悩んでる?」

友「んー、悩みってほどではないんだが」

友(もう流石に狙ってくることは無いだろ……ないよな?)

女「……?」

友「なんでもねぇよ、なんでも」

友(まぁ、何度来ても渡さないけど)

女「……ぼー」

友(……少し心配な気がしてきた)

69 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/03(火) 14:50:28.62 ID:1yysNqJeo [10/11]
友「な、なぁ……」

女「……?」

友「その……だな」

女「……」

友「……ん、んむ……」

女「……ぺろ」

友「や、やっぱり似てきてないか……?」

女「??」

友(だ、大分心配だ……)

後輩「先輩、そろそろ寝ませんか?」先輩「えー?まだ早いよ」

1 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/10/20(火) 10:35:31.02 ID:13Oon+IJo [1/14]
先輩「もしかして……このゲーム、つまらなかった?」

後輩「いえ、そうではなくて……明日も朝早いので」

先輩「あー、そっか。月曜日か」

後輩「ごめんなさい、先輩」

先輩「謝られると逆に困っちゃうなぁ」

先輩「しょうがない、寝よっか」

後輩「え?先輩はいいんですか」

先輩「二人でやんないとつまんないゲームだから」

後輩「そう、ですか」

先輩「そうなんです」

2 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/10/20(火) 10:39:00.86 ID:13Oon+IJo [2/14]
後輩「……ん」

後輩(もう、朝……時間は?)

後輩(うん、まだ平気)

後輩「んーぅ……」

先輩「すぅ……」

後輩「それじゃ、行ってきますね。先輩」

後輩「……」

後輩「……ちぅ」

3 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/10/20(火) 10:44:40.88 ID:13Oon+IJo [3/14]
先輩「んーぅ……っと」

先輩(今何時……ふむ)

先輩「どうりでお腹が空いてるわけだ」

先輩(後輩ちゃんもそろそろお昼食べてるかな?)

先輩「さて、今日は何味にしようかなっと……ん」


後輩『先輩、起きてましたか』

先輩「うん、どしたの」

後輩『またカップ麺で済ませようとしている予感がしましたので』

先輩「……」

後輩『材料は買ってあるんですから、自炊の練習ちゃんとしてください』

先輩「……ふぁーい」

後輩『ちゃんと食材減ってるかチェックしますからね。捨てたりしたら……』

先輩「わ、分かってるって。じゃぁね」

後輩『あっ、先輩?』

4 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/10/20(火) 10:50:11.70 ID:13Oon+IJo [4/14]
後輩「もう……」

後輩(やっぱりちゃんと作り置きして置いた方がいいのでしょうか)

後輩(こうしてコンビニ弁当を突いている手前、強く言えない気がしてなりません)

「さっきの電話、聞こえちゃった」

後輩「あ、どうも……」

「弟くん?大変だねぇ、お姉ちゃんは」

後輩「へ?えと……まぁ」

後輩(年上が相手なんですけど、とは言えないな)

5 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/10/20(火) 10:56:33.65 ID:13Oon+IJo [5/14]
「後輩ちゃん、飲んでる?」

後輩「あ、はい。頂いてます」

後輩(参ったな、早く帰りたいのに……)

「ねぇ、後輩ちゃんってさ」

後輩「はい、なんでしょうか?」

「今、彼氏っているの?」

後輩「……」

後輩「……います」

「え?何?今の沈黙。あっやしー」

後輩(めんどくさいな、もう……ん)

後輩(……ドクロの絵文字)

後輩「すいません、急用が出来たので帰らせていただきます」

「へ?あ、ちょっ……」

「おい、お前が調子に乗るからだぞー」

「あーあ、後輩ちゃん帰っちゃったの?」


後輩(駅前のシュークリーム屋さん、まだ開いてるかな?)

6 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[sage] 投稿日:2015/10/20(火) 10:56:56.36 ID:eWcB9S2qo
お?両方とも女性かな?期待

7 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/10/20(火) 10:59:14.54 ID:13Oon+IJo [6/14]
後輩(……電気、付いてない)

後輩(どこかに遊びに?なわけないか)


後輩「……先輩?」

「……」

後輩(毛布が盛り上がってる……なんてベタな)

後輩「ただいま帰りました、先輩」

先輩「……」

後輩(……毛布つむり)

先輩「……お腹空いた」

後輩「材料はあったはずですが?」

先輩「……む」

後輩(台所が悲惨な事に……)

先輩「全然おいしくなかった」

後輩「分かりました、すぐに作りますね」

先輩「おいしくなかったー」

後輩「駅前のシュークリーム、ありますから」

先輩「ほんと?」

後輩「夕食の後ですよ」

8 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/10/20(火) 11:05:37.82 ID:13Oon+IJo [7/14]
後輩「……ふぅ」

後輩(昔から、子供っぽくてずぼらな所がある人だとは思っていましたが)

後輩(家賃が払えなくなって街を放浪していた所を見つけた時は、驚きました)

後輩(何も知らない先輩、まるでケースに入れられた魚のような、先輩……)

後輩(……少し失礼な物言いでしょうか)


後輩「先輩、あがりましたよ」

先輩「もぐもぐ……」

後輩「どうですか?」

先輩「おいしいよ、ほら後輩ちゃんも。あーん」

後輩「……」

後輩「……あーん」

先輩「おいしい?」

後輩「はい、おいしいですよ」

9 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/10/20(火) 11:08:10.17 ID:13Oon+IJo [8/14]
先輩「……あ」

先輩「後輩ちゃん、下着取ってー」

先輩「……後輩ちゃん?」


後輩「……」

先輩「ありゃ、寝てる」

先輩「毛布毛布っと……」

先輩「お疲れ様、後輩ちゃん」


先輩「っと、寒い寒い」

後輩「……」

後輩(……相変わらずスタイル抜群ですね、先輩)

10 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/10/20(火) 11:25:54.36 ID:13Oon+IJo [9/14]
後輩「……っ」

後輩(しまった、本当に寝ちゃってた……)

先輩「~♪」

後輩「先輩、まだ起きてたんですか」

先輩「あっ、後輩ちゃん。ごめん、起こしちゃった?」

後輩「いえ、普段寝ない時間だったので体が自然に」

先輩「そっか、ならよかった」

後輩「よくないです、先輩。こんな時間までゲームだなんて」

先輩「後輩ちゃんも、やる?」

後輩「え……」

後輩(……この時間から寝ると遅刻してしまうかもしれません)

後輩「操作方法を教えていただいてもいいですか?」

11 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[sage] 投稿日:2015/10/20(火) 11:38:43.11 ID:13Oon+IJo [10/14]
続きます

12 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[sage] 投稿日:2015/10/20(火) 11:54:08.43 ID:ESTcNlkeO
きたい

13 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/10/20(火) 14:45:44.34 ID:13Oon+IJo [11/14]
「おーい」

後輩「……」

「おーい、後輩ちゃん、おーきーてー」

後輩「……んぁ?」

「よかった、起きた」

後輩「くぁ……せん、ぱい?」

先輩「はい、先輩です」

後輩「……っ!?い、今何時ですか!?」

先輩「ご安心を、いつも後輩ちゃんが起きる時間でございます」

後輩「よかった……」

後輩「先輩がこんな時間に起きているなんて、珍しい事もありますね。おかげで助かりました」

先輩「寝てないんだなこれが」

後輩「……健康に悪いですよ」

先輩「今さら?」

後輩「……シャワー、浴びてきます」

先輩「ふわーぁ……それじゃ、私は寝ようかな……」


後輩(……私を起こすために起きていてくれた、とか?)

後輩(自意識過剰みたいで聞けませんね)

14 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/10/20(火) 14:48:03.94 ID:13Oon+IJo [12/14]
後輩「おはようございます」

「おはよう、後輩さん」

後輩「……」

「わっ、どうしたのその隈。大変な事なってるよ」

後輩「……徹夜でゲームを、してしまいまして」

「後輩さん、徹夜でゲームとかするんだ。ちょっと意外かもー」

後輩(自分でも意外です……)

15 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/10/20(火) 14:53:39.94 ID:13Oon+IJo [13/14]
「後輩ちゃん、ゲーム好きなの?」

後輩(この人は確か、昨日の……)

後輩「……まぁ、たしなむ程度には」

「俺の家、最新のゲーム機揃ってるよ!」

後輩(ゲーム機……そういえば先輩は中古で買ってきた古いゲームばかりやってますね)

「そ、それで―――今日空いて―――」

後輩(流行に興味が無いのでしょうか。それとも、私に遠慮して……?)

「ど、どうかな?」

後輩「あ、すいません。聞いてませんでした」

「……ぅ」

後輩「……?」

「ま、また今度でいいや。じゃ、じゃあね」


後輩「……なんだったんでしょうか」

「やるねぇ、後輩さん」

後輩「??」

16 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/10/20(火) 15:10:41.57 ID:13Oon+IJo [14/14]
後輩(……これが最新のゲーム機、か)

後輩(いち、じゅう、ひゃく、せん、まん……むぅ、結構しますね)

後輩(でも、先輩が喜ぶなら……)

後輩(いや、そもそも先輩が欲しがってるかどうかも……)

後輩(……推測で悩むのは性に合いませんね)


先輩「お腹空いたなー、後輩ちゃんまだかなー……ん?」

先輩「後輩ちゃんからメールだ。なんだろ?また遅れるとかかな」

先輩「なになに……」


後輩『先輩、今一番欲しい物ってなんですか?』


先輩「……?」

先輩「お腹、空いたから、早く帰って、きて……と」


後輩「……ん」

後輩「先輩、そういう事じゃなくて……」

後輩(……うぅん、先輩の望みは正にこれなんでしょうね。好意の押し付けはやめましょう)

後輩「そうと決まれば、早く帰らねば」

17 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[sage] 投稿日:2015/10/20(火) 22:58:51.06 ID:a0EySXjco
ええな

18 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/10/21(水) 13:31:12.88 ID:72grUMV4o [1/6]
後輩「先輩、ただいま帰りました」

先輩「おかえりなさーい」

先輩「後輩ちゃん、私の誕生日は結構先だよ」

後輩「ちゃんと覚えてますよ。そういう意味のメールじゃありません」

先輩「じゃあ、どういう事?」

後輩「……」

後輩「……実はですね」

19 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/10/21(水) 13:38:22.24 ID:72grUMV4o [2/6]
先輩「そんなこと考えてたんだ、後輩ちゃん」

後輩「……はい」

先輩「……ぎゅう」

後輩「っ」

後輩「せ、先輩……っ」

先輩「我慢を全くしてないかって言ったら、嘘になっちゃうけど」

先輩「その我慢はきっと、必要な我慢なんだと思うから。だから、平気だよ」

後輩「せん、ぱい……」

先輩「なで、なで」

後輩「く、くすぐったいですよ」

先輩「あはは、お腹空いちゃった。早く晩御飯食べよ?」

後輩「……はい」

20 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/10/21(水) 13:48:40.89 ID:72grUMV4o [3/6]
先輩「~♪」

後輩「……」

先輩「ん、後輩ちゃんもやりたいの?」

後輩「……明日はお休みなので」

先輩「あれ?水曜日だよね、明日」

後輩「祝日くらいは覚えておきましょう、先輩」

先輩「そういえばそうだっけ」

後輩「……で、その」

先輩「久しぶりにお出かけでもするー?後輩ちゃん、行きたい場所とかあるかな」

後輩「先輩はどうですか?」

先輩「私が出不精なの一番知ってるお方が何をおっしゃる」

後輩「それを言ったら、私もあまり外出する方ではないですよ」

先輩「んー、それじゃやっぱり……はいっ」

先輩「休みと言えば、徹夜ゲームでしょ!」

後輩「……お付き合いします」

21 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/10/21(水) 14:23:17.78 ID:72grUMV4o [4/6]
先輩「後輩ちゃん、そこはこうするんだよ」

後輩「なるほど」


先輩「おっ、後輩ちゃんやるねぇ」

後輩「恐縮です」


後輩「先輩、このアイテムこれと組み合わせてはどうでしょう?」

先輩「おぉ、いいね」


後輩「……」

先輩「……」

22 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[sage] 投稿日:2015/10/21(水) 14:26:22.57 ID:s24llUxxo [1/2]
きたか

23 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/10/21(水) 14:40:00.71 ID:72grUMV4o [5/6]
先輩「ぐー……」

後輩「……徹夜ゲームじゃなかったんですか?先輩」

後輩「……」

後輩「……ん……」


先輩「……じー」

後輩「……」

後輩「起きて、いらっしゃったんですか?」

先輩「うぅん、今起きたんだよ」

後輩「……」

先輩「……」


先輩「今日は一緒にお風呂はいろっか」

後輩「……はい」

27 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/10/22(木) 22:44:49.44 ID:JTjBVz53O [1/8]
後輩「……ふー」

先輩「お湯加減どう?後輩ちゃん」 

後輩「私は丁度いいですが……少し熱いかもしれません」

先輩「いちち、目にシャンプーが……」

後輩「大丈夫ですか?先輩。シャワーです、どうぞ」

先輩「んーぅ……ありがと、後輩ちゃん」

後輩「いえいえ」

28 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/10/22(木) 22:47:45.01 ID:JTjBVz53O [2/8]
先輩「二人だと流石に狭いね」

後輩「そう、ですね」

先輩「はー……」

後輩(普段クセ毛だから、髪の毛真っ直ぐの先輩がたまに別人に見えちゃいます)

先輩「後輩ちゃん、また大きくなった?」

後輩「へ?」

先輩「わきわき……」

後輩「ひゃっ!?せ、先輩っ」

先輩「よいではないかよいではないかー」

29 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/10/22(木) 22:58:14.56 ID:JTjBVz53O [3/8]
先輩「男の人は大きいのが好きってよく聞くけれど」

後輩「だめです、先輩……」

先輩「私も大きい方が好きだなぁ」

後輩「ん……ぅ」

先輩「こうやってクッションみたいに出来るしー」

後輩(先輩の髪……同じシャンプーのはずなのに……)

後輩「わ、私は先輩みたいに……スタイルがいい方が、いいです」

先輩「そうかなぁ?」

後輩「そう、です」

先輩「えへへ、ありがと」

後輩(……その笑顔は反則、です)

30 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/10/22(木) 23:06:47.15 ID:JTjBVz53O [4/8]
後輩「先輩、ちゃんと乾かさないとダメですよ」

先輩「えー、どうせめちゃくちゃになるんだからいいよぉ」

後輩「ダメです」

先輩「んじゃあ……後輩ちゃん、おねがーい」

後輩「……どうぞこちらへ」


先輩「~♪」

後輩(……やっぱり、いい香り)

31 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/10/22(木) 23:14:59.73 ID:JTjBVz53O [5/8]
先輩「ねぇ、後輩ちゃん」

後輩「はい、何でしょうか」

先輩「私が我慢をしてないかって、後輩ちゃんは言ってたけど」

先輩「あれって普通、私が聞くことなんじゃないかな?」

後輩「……」

先輩「辛かったらいつでも言ってね……なんて言える立場じゃないか、あはは」

先輩「……わぷあっ?」

後輩「……ぎゅう」

先輩「後輩ちゃんの髪……いい香りがするね」

後輩「先輩の髪と変わりませんよ。同じシャンプーなんですから」

先輩「えー?なんか違うと思うけど、気のせいかぁ」

32 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/10/22(木) 23:19:34.54 ID:JTjBVz53O [6/8]
後輩(私が無理するのは、当たり前なんですよ?先輩)

後輩(だって無理に先輩を縛り付けてるのは、私なんですから)

先輩「……へくしっ」

後輩「あっ、す、すいません。風邪ひいちゃいますね」

先輩「後輩ちゃんもね、早く服着よ」

後輩(……残念)

33 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/10/22(木) 23:27:54.83 ID:JTjBVz53O [7/8]
先輩「さーてっと……寝ますか!」

後輩「もうですか?今日はお早いですね、先輩」

先輩「……ぽん、ぽん」

後輩「……?」

先輩「いつも思っていたけど、一人で寝るには大きいと思うんだこの布団」

後輩「……では、失礼します」

先輩「どうぞ、遠慮なく」


先輩「後輩ちゃんほど弾力がなくて申し訳ない」

後輩「私は好きだから、いいんです」

先輩「んふふー」

後輩「……ふふ」

36 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/10/23(金) 20:28:43.18 ID:VdXKAXKdO [1/6]
『どうしたの?こんな所に一人で』

『え?あの、その……』

『見ない顔だね、もしかして新入生かな』

『ウチのガッコ広いから、こうして迷い込む子が毎年いるんだよね』

『はい、手』

『……はい?』

『ほら、急がないと遅刻になっちゃうよ』

『……あ、ありがとうございます』

37 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/10/23(金) 20:41:12.18 ID:VdXKAXKdO [2/6]
『いやぁ助かったよ、キミがうちのサークルに来てくれて』

『……いえ、そんな』

『こうして改めて知り合えたんだし、キミって呼び方は他人行儀かな』

『よろしくね、後輩ちゃん』

『よ、よろしくお願いします。先輩』


『他の方はいらっしゃらないんですか?』

『ほとんど名前借りてるだけだからねー』

『そ、そうなんですね』

『だから後輩ちゃんも無理に来なくて大丈夫だよ』

『いえ、ちゃんと来ます』



38 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/10/23(金) 20:55:09.02 ID:VdXKAXKdO [3/6]
『ここに来るのも今日までかー』

『長いようで短かったなぁ』

『……先輩』

『あれ、後輩ちゃん。どうしたの?こんな所で』

『少し、懐かしみに』

『あはは、後輩ちゃんが卒業するわけじゃないのに』

『あの時も先輩は、今と同じように話しかけてくださいましたね、どうしたの?って』

『懐かしいねぇ』

『……先輩』

『んー?』


『……また、会えますか?』

『んー……』

『また会う気がするなぁ、なんでかは分からないけど、さ』

39 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/10/23(金) 21:10:54.23 ID:VdXKAXKdO [4/6]
後輩「……ん、ぅ?」

後輩(なんだか凄く、懐かしい夢を見ていたような気が……)

後輩「……?」

後輩「せん……ぱい?」

後輩「せんぱいっ!」


先輩「どうしたの?後輩ちゃん」

後輩「……い、いたんですか」

先輩「私も起きたのはさっきだけどね。後輩ちゃん、かわゆい顔で寝てるもんだからおこしづらくって」

後輩「……」

先輩「後輩ちゃん?」

後輩「……ぎゅー」

先輩「もがが」

後輩(この気持ちはあんな夢、見たせいです)

後輩(そう、きっとそう)

先輩「よしよし、いいこいいこ」


40 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/10/23(金) 21:28:33.10 ID:VdXKAXKdO [5/6]
後輩「こんな時間まで寝てしまってたんですね、私」

先輩「お休みの日くらいいいんじゃない?」

後輩「せっかくの休みだからこそ、時間を無駄にしたくなかったんですが」

先輩「それじゃ、今からの時間を有効に使えばいいよ」

後輩「そう改めて言われても、なかなか難しいというか……」

後輩「……じー」

先輩「……?顔になにか付いてるかな」

後輩「いえ、その……」


先輩「……先にお風呂、入ろっか」

後輩「……はい」

46 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/10/24(土) 21:17:51.00 ID:bRGlXwq3O [1/5]
後輩「……ぼーっ」

後輩(……先輩、柔らかかった……)

後輩「……」

「こーうはいちゃんっ」

後輩「……はひ、なんでしょうか?」

「……そんな後輩ちゃんの顔、初めて見たわ」

後輩「ど、どんな顔してました?」

「なんて言ったらいいんだろ、マタタビを思う存分渡された猫?かな」

後輩「そんな顔してましたか、私……ぺしぺし」

「いや、悪いことじゃないと思うよ。いつもの後輩ちゃん、こう眉間にシワが寄っちゃってるから」

後輩(……自分じゃわからないですね)

47 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/10/24(土) 21:25:35.92 ID:bRGlXwq3O [2/5]
「それで、なんか良いことでもあったわけ?」

後輩「それは……まあ、その」

「いいなぁ、そういうの。初々しいって言うか」

後輩(そういえば、先輩は初めてだったんでしょうか?)

「私も彼氏、作ろうかしら」

後輩「……彼氏」

「ん、どうかしたの?」

後輩「あ、いえ……」

後輩(そう、普通は彼氏……ですよね)

48 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/10/24(土) 21:29:40.61 ID:bRGlXwq3O [3/5]
後輩(先輩はどう思ってるのでしょうか、この歪な関係を)

後輩(聞けるわけないことを悩んでも、仕方のない事ですが)

後輩(なぜ今になって、私はこんなにも不安になっているのでしょうか?)

後輩(……いえ、今になってではありませんね。私は昔から変わらないまま)

後輩(先輩にも変わらない事を、強要してしまっている)

後輩(……先輩)

49 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/10/24(土) 21:37:42.02 ID:bRGlXwq3O [4/5]
「こ、後輩ちゃん。そんなに飲んで大丈夫?」

後輩「……ら、らいじょぶれふ」

(ど、どう見ても大丈夫じゃない……でも、今ここにいる男に送らせるのはちょっとなぁ)

後輩「……げふーぅ」

(とはいえ、今の状態の後輩ちゃんにまともな道案内も期待出来ないし……ん、そうだ)

「後輩ちゃん、少しスマホ借りるわね」

後輩「……」

(通話履歴から……って、ほとんど同じ人ね)

(この先輩ってのが彼氏さん、かな?)

「お願い、出て……」

『もしもーし、後輩ちゃん?』

「……女の人の、声?」

『あれ、後輩ちゃんじゃない?もしもーし』

(……はっ、今は考えてる場合じゃないか)

「私は後輩ちゃんの会社の同僚で……」

53 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/10/26(月) 21:20:00.19 ID:wF2XcDPxo [1/2]
後輩「……うー」

先輩「大丈夫?後輩ちゃん、立てる?」

後輩「……気持ち悪い、です……」

先輩「吐いちゃえばいいよ、我慢しないで」

後輩「……う、ぷ……」

先輩「……さす、さす」

後輩「……ぅ」

先輩(後輩ちゃんがここまで飲むなんて、珍しいな)

後輩「……ぐぅ」

先輩「あ、寝ちゃった」

54 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/10/26(月) 21:37:18.74 ID:wF2XcDPxo [2/2]
先輩「連絡くださってありがとうございます」

「あ、いえ……」

先輩「よい、しょっと……」

後輩「……」

「そ、そのまま背負って行くんですか?」

先輩「急いでたもので、財布を家に忘れてしまって」

「立て替えておきましょうか?」

先輩「……」

先輩「大丈夫です、お構いなく」

「……っ」

55 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/10/27(火) 00:06:11.04 ID:gIAL5Zi+o [1/4]
「……あ、あの」

先輩「まだ何か?」

(先輩とか言う人が、女にだらしない男って可能性もまだ、ないわけじゃないけど……)

「あなたが、先輩さん……ですか?」

先輩「……そうですが、何か?」

「え?あ、その……後輩ちゃんとは、どういうご関係で?」

(なにを聞いてるんだろ、私。先輩後輩に決まって……)

先輩「恋人ですけど」

「あぁ、こいび……へ?」

先輩「もうよかったですか?」

「あ……は、はい」

先輩「それでは、これで」

「……は、はは」

56 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/10/27(火) 00:26:26.50 ID:gIAL5Zi+o [2/4]
先輩「……」

後輩「……せん、ぱひ」

先輩「あ、後輩ちゃん。起きた?」

後輩「……ずっと、おきてましたよ……」

先輩「そうだったんだ」

後輩「……せんぱい、すきですぅ……」

先輩「私も大好きだよ、後輩ちゃん」

後輩「……すぅ……すぅ」

先輩「……今度は本当に、寝ちゃったかな?」

先輩(……さっきの人に余計な事、行っちゃった気がするなぁ)

先輩(……大丈夫だとは、思うんだけれど)

57 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/10/27(火) 01:19:58.47 ID:gIAL5Zi+o [3/4]
後輩「……?」

後輩(あれ、ここは……どうやって帰ってきたんだっけ)

後輩「……っ」

後輩(頭がガンガンする……水、水……)


後輩「……んぐ、んぐ」

後輩「……ぷぁ」

後輩(だんだん頭がすっきりしてきました……)


先輩「……ぐー……」

後輩(先輩、シャツのままで寝ちゃシワになっちゃいますよ)

先輩「んー……ぅー……」

後輩「……先輩、ありがとうございました」

後輩「……ちう」

63 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/10/28(水) 02:05:44.62 ID:hlpDGvG6o [1/6]
後輩「……おはようございます」

「あ……お、おはよう。大丈夫だった?あの後」

後輩「はい……ご迷惑おかけしました」

「……えと」

後輩「……?」

「あの先輩って人と……恋人だって、ほんと?」

(……って、聞く必要ないのに)

後輩「……」

「ごめんね、後輩ちゃん。答えたくなければ……」

後輩「本当ですよ」

「……そう、なんだ」

64 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/10/28(水) 02:25:49.49 ID:hlpDGvG6o [2/6]
後輩「すいません、隠していたかったわけではないんですが」

後輩「あえて言う事でも無い気がしてしまっていたんです」

「……」

後輩「ちょうどいい機会だったのかもしれません」

後輩(きっとこんな事でも無い限り、私からは言い出せなかったでしょうし)

「……えと、その」

後輩「……変だと、思いますか?」

「あ、いや……」

後輩「いいんですよ、自分でも思わないわけじゃないですから」

「……そうなの?」

後輩「はい、いつも不安で一杯です」

65 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/10/28(水) 02:40:27.91 ID:hlpDGvG6o [3/6]
「それなら、なんで……」

後輩「……それでも」

後輩(そうだ、それでも……)

後輩「それでも、好きなんです」

「……そう、なんだ」

後輩「……はっ」

後輩「す、すいません。こんな事言われても困りますよね」

「うぅん、後輩ちゃんの意外な顔が見れてよかったよ」

後輩「お恥ずかしい、です」

「他の人には一応、内緒にしておくね」

後輩「ありがとうございます」

「っと、少し話し込んじゃったわね。急ぎましょ」

後輩「……はい」

(……それでも好きなんです、か。少し、憧れるな)

66 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/10/28(水) 03:47:31.51 ID:hlpDGvG6o [4/6]
後輩(それでも好きなんです……か)

後輩(こんな簡単な事だったんですね)

後輩(先輩に、凄く会いたい……)


先輩「……んー、お腹空いたなぁ」

先輩「今日も後輩ちゃん、遅いのかな……」


後輩「……せん、ぱいっ!」

先輩「あれ、後輩ちゃん。今日ははや……」

先輩「わぷぁっ」

後輩「先輩……大好き、です」

先輩「……ん、ありがと」

後輩「ずっと一緒に、いましょう」

先輩「私は最初から、そのつもりだよ」

後輩「先輩、せんぱい……っ」

先輩「……なで、なで」

67 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/10/28(水) 03:54:54.49 ID:hlpDGvG6o [5/6]
後輩「……先輩、そろそろ寝ませんか?」

先輩「えー?まだ早いよ」

後輩「……そうですね、もう少し起きてましょうか」

先輩「うんうん、そうしよう」


後輩「……ぎぅ」

先輩「……ぎゅーっ」
プロフィール

花見月

Author:花見月
主に2ch系掲示板で自分が書いたSSを纏めてます
思い出したものからかたっぱしに記事にするので順不同で

twitterでも更新報告したりしてます
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