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≪現行スレ≫
女「先輩、起きてくださいッス」

≪更新情報≫
2/20  あきつ丸「提督殿の、おタバコは甘い香りがしますな」 二次創作に追加
1/13  女「私は好きだよ、アンタの事」 百合物に追加
1/10  この世の果てへと至る旅路 一般に追加
12/22 姉「私の義妹」妹「私のお姉ちゃん」 百合物に追加
11/11 男「変な奴に懐かれた」少女「変な奴とは失礼な」 一般に追加
11/3 友「先輩と付き合ってるって言ってなかったっけ?」女「……うん」  一般に追加

≪目次≫ ジャンル毎に下に行くほど古い気がする

一般

この世の果てへと至る旅路
地の文あり 昔の感性を思い出しながら書いた、つもり

男「変な奴に懐かれた」少女「変な奴とは失礼な」
タイトル締めを久々にやろうと思ったけどイマイチだった

友「先輩と付き合ってるって言ってなかったっけ?」女「……うん」
三角関係みたいなのが書きたかったけど結局短くまとめてしまった作品 

ネクロくんとマンサちゃん
まったく読んでもらえなかったけど気に入ってる一作 いつか続き書きたい

猫耳パーカーとフーセンガム
初期よりだいぶ短いもの書くのが増えた

あの日までボクは、普通だった
地の分入れだしたあたりの作品

後輩「あ、先輩。今日もお疲れ様です」
これもかなり初期の物 

勇者「その武器重くねぇの?」
二作目にしてもっとも長い作品 支援絵とか貰えた記憶が

女「病んでしまいました」
処女作 今見ると結構恥ずかしい

百合物

女「私は好きだよ、アンタの事」
百合物復帰作 短い、内容ない、ないないづくし

姉「私の義妹」妹「私のお姉ちゃん」
初の姉妹百合 久々に地の分を書いたので出来上がりが心配な一作

後輩「先輩、そろそろ寝ませんか?」先輩「えー?まだ早いよ」
百合って養われてる系あまりないな……と思って書いた作品 自分があまり知らないだけかな?

保健医「初恋の相談?」女生徒「……はい」
二つの視点を並行させたらなにさせたいのか分からなくなった作品

後輩「先輩、アメ食べます?アメ」先輩「んー……」
これも先輩後輩物 あんま百合百合してなかったせいか不評

後輩「先輩、タバコやめてください」先輩「えー」
百合物は年上×年下しか書いてない

先輩「うぉー、あっちぃ……」後輩「先輩、みっともないです」
スピキュール


二次創作

あきつ丸「提督殿のおタバコは甘い香りがしますな」
あきつ丸の声もうちょいハスキーなほうがいいと思うのは私だけ?

飛行甲板と恋心
現行スレでほんとにまったく反応がなかった初めての作品 最上

うちの提督はタバコがお好き
ボクっ娘艦が大好きなので時雨で一作

安価スレ
多くてまとめるのが大変なのでシリーズ名だけ

ボクっ娘とあそぼ!シリーズ

晴れのち雨、時々○○シリーズ

あきつ丸「提督殿のおタバコは甘い香りがしますな」

1 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2016/02/20(土) 05:55:09.28 ID:TAVDjEYRo [1/19]
提督「……そうか?」

あきつ丸「はい。自分はあまりタバコに通じておりません故、他と比較は出来ませんが」

提督「……吸ってみるか?」

あきつ丸「へ?」

提督「興味、ありそうな口ぶりだ」

あきつ丸「まぁ……あるなしで言えば、ありますが」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1455915309


2 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2016/02/20(土) 05:59:01.01 ID:TAVDjEYRo [2/19]
提督「……ほれ」

あきつ丸「?」

提督「悪いな、最後の一本なんだ」

あきつ丸「そ、それは提督殿に悪いであります」

提督「いつも吸ってる味だ。今さら一本ぐらいで不平も言うまい」

あきつ丸「そ、そうではなく……」

提督「??」

3 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2016/02/20(土) 06:10:28.08 ID:TAVDjEYRo [3/19]
提督「早くしないと、火が回る」

あきつ丸「あ……は、はいっ」

提督「ほら、ゆっくり吸ってみろ」

あきつ丸「……すぅー」

提督「あ、おい」


あきつ丸「~っ!」

提督「あちゃー」

あきつ丸「けほっ、けっほげっほ……っ」

提督「いきなり深く吸い過ぎだ」

あきつ丸「し、死ぬかと思ったであります……」

4 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2016/02/20(土) 06:13:34.78 ID:TAVDjEYRo [4/19]
提督「あー、勿体ない」

あきつ丸「……あ」

提督「こんな風に、ゆっくり吸って……」

あきつ丸「……」

提督「ゆっくり、吐くんだ」


提督「なんだ、俺の顔に何か付いてるか?」

あきつ丸「あ、いえ……何でも、ないであります」

5 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2016/02/20(土) 06:25:47.67 ID:TAVDjEYRo [5/19]
あきつ丸「……すぅー」

提督「あきつ丸」

あきつ丸「っ!」

あきつ丸「あわ、あわっ……わちゃちゃっ!?」

提督「……何をやってるんだ?」

あきつ丸「こ、これは……その」

提督「気に入ったのか?タバコ」

あきつ丸「まだなんとも……」

提督「……そうか」

6 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2016/02/20(土) 06:30:53.76 ID:TAVDjEYRo [6/19]
提督「……ふー」

あきつ丸(……やはり自分で吸うより、吸ってるところを眺めている方が)

提督「ほれ」

あきつ丸「?」

提督「いや、じーっと見てるから」

あきつ丸「あ、あぁ……いただきます」


提督「……ふー」

あきつ丸「……ふ、ふぅー」

7 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2016/02/20(土) 06:40:15.58 ID:TAVDjEYRo [7/19]
提督「あきつ丸」

あきつ丸「は、はいっ!なんでありましょうか」

提督「ムリして吸わなくてもいいんだぞ」

あきつ丸「そ、そんな事は……!」

提督「……ふぅー」

あきつ丸「……ムリしているつもりは、無かったのですありますが」

提督「気分が乗らない時は、断ってもいい」

あきつ丸「……了解、であります」

20 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2016/02/20(土) 18:41:15.86 ID:TAVDjEYRo [9/19]
あきつ丸「あきつ丸、ただいま戻りました」

あきつ丸「……提督殿?」

あきつ丸(風呂、でありましょうか)

あきつ丸「……」

あきつ丸「提督殿の、上着……」

あきつ丸「くん、くん」

あきつ丸(なんだか、不思議な香り……)


提督「……」

あきつ丸「……はっ」

21 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2016/02/20(土) 19:00:44.54 ID:TAVDjEYRo [10/19]
あきつ丸「こ、これは……その……」

提督殿「……やっぱり、臭うか?」

あきつ丸「へ?」

提督殿「出先で指摘されたものでな。お前も気になっていたのか?」

あきつ丸「んー……独特な香り、と言いますか。何と言いますか……」

提督殿「やっぱりそうか」

あきつ丸「じ、自分はっ」

提督殿「む」

あきつ丸「自分は嫌いじゃないであります、この香り」

22 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2016/02/20(土) 19:15:29.25 ID:TAVDjEYRo [11/19]
提督「そう言ってくれるのは嬉しいが」

あきつ丸「……じー」

提督「やはり、ここは一度やめてみるべきだろうか」

あきつ丸「それが提督殿のご意思なら、自分はお手伝いします」

提督「感謝する」

あきつ丸(少し残念ではありますが……提督殿のお体の事も考えれば、正しい事でありましょう)

23 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2016/02/20(土) 19:29:49.37 ID:TAVDjEYRo [12/19]
あきつ丸「提督殿、本営より入電が……」

提督「うむ、ご苦労」

あきつ丸「……あれ?」

提督「……ふぅー」

あきつ丸「提督殿、それ」

提督「む?」

あきつ丸「おやめになるのではなかったのですか」

提督「ん、ん」

あきつ丸(箱が変わっている……でありますね)

24 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2016/02/20(土) 19:37:34.89 ID:TAVDjEYRo [13/19]
提督「技術は詳しくは知らないが、これは煙が少ないタバコらしい」

あきつ丸「……そうでありますか」

あきつ丸(心配して損した気分であります)

提督「それで、入電は?」

あきつ丸「あ、これであります。どうぞ」

あきつ丸(まぁ、提督殿がよいのならそれで……)

25 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2016/02/20(土) 19:39:40.15 ID:TAVDjEYRo [14/19]
提督「吸ってみるか?」

あきつ丸「ん……では、一本だけ」

提督「しまった、また最後の一本だ」

あきつ丸「では、拝借」

提督「あっ」

あきつ丸「……すぅー」

提督「そうそう、上手だ」

あきつ丸(やっぱり、タバコ自体の良さはよく分からんでありますなぁ……)

26 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2016/02/20(土) 19:45:13.63 ID:TAVDjEYRo [15/19]
提督「比べてみてどうだ?」

あきつ丸「うーん……」

あきつ丸(結局の所……)



あきつ丸「提督殿が吸っているタバコなら、何でもいいでありますねぇ」


提督「……」

あきつ丸「……あ」

あきつ丸(思わず口に……)

提督「……そうか」

あきつ丸「あの、提督殿。今のは何でもいいって言う投げやりな回答ではなく……」

27 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2016/02/20(土) 19:50:18.97 ID:TAVDjEYRo [16/19]
あきつ丸「んむっ……」

あきつ丸「……ん、むっ……」

あきつ丸「ぷあっ……はっ」


提督「つまりは、こういう事でもいいと言う事か」

あきつ丸「……そ、それは」

提督「最後の一本が無くなって、口が寂しいな」

あきつ丸「ちょっと、ていとくど……」


あきつ丸「……んむぅっ」

28 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2016/02/20(土) 19:59:03.91 ID:TAVDjEYRo [17/19]
提督「……ぷはー」

あきつ丸「結局元に戻したのでありますね」

提督「何でもいいらしいから」

あきつ丸「やめるのが一番よろしいのでは?」

提督「それが本音なら、やめるが」

あきつ丸「……意地悪でありますね、提督殿は」

提督「そうかな」


提督「……あ」

あきつ丸「?」

提督「しまった、最後の一本だ」

あきつ丸「い、いつもいつも。本当に最後の一本なのでありますか?」

提督「嘘付いてどうする」

あきつ丸「だ、だって……」

29 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2016/02/20(土) 20:14:54.83 ID:TAVDjEYRo [18/19]
提督「嫌なら……」

あきつ丸「……」

提督「すまん、意地悪が過ぎた」

あきつ丸「ほんとに反省してるでありますか?」

提督「してるしてる」


あきつ丸「なら、何でありますかこの手は……」

提督「つい」

あきつ丸「ついって……もう、しょうがないでありますね」


あきつ丸(……甘い味が、しますなぁ)

女「私は好きだよ、アンタの事」

1 名前:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/10(日) 23:31:08.78 ID:YSY4iPZSo [1/5]
友「……またここにいたんだ」

女「なんだ、お前か」

友「……今、何か隠した?」

女「お前が来るなら別に隠さなかったよ」

友「……身体に悪いよ」

女「言われなくても分かってるさ」

友「……もう」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1452436268


2 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/10(日) 23:34:15.34 ID:YSY4iPZSo [2/5]
友「……よいしょ」

女「ぷぁー……っと」

友「……そんなに美味しいの?それ」

女「お、試してみっか?」

友「……ご遠慮しておきます」

女「ちぇっ、つまんねーの」

友「……一本だけ、なら」

女「おっ?」

3 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/10(日) 23:35:38.25 ID:YSY4iPZSo [3/5]
女「ほれ、一本」

友「……はぐ」

女「顔、こっちに向けな。火付けてやるよ」

友「……こくこく」

女「……」

友「……?」

女「……ぷっ」

女「あはははっ」

友「??」

4 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/10(日) 23:37:30.73 ID:YSY4iPZSo [4/5]
女「わりーわりー、あんまり必死な顔してるもんだから……ひー、おかしー」

友「……むー」

女「吸いながらじゃないと火は付かないんだなこれが」

友「……そう、なんだ」

女「やっぱお前には似合わねーわ」

友「……そうかな、分からないと思うけど」

女「……ふぅー」


女「なんかあったのか?」

友「……」

5 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/10(日) 23:40:33.98 ID:YSY4iPZSo [5/5]
友「……なんにもないよ」

女「あっ、そ」

友「……」

女「……ふー」

友「……あなたは」

女「ん」

友「好きな人って、いる?」

女「随分急な質問だな」

友「……答えにくかったら、いい」

女「何も言ってねーだろまだ」

9 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/11(月) 19:47:50.82 ID:n1OPOYoXo [2/14]
女「……いるよ」

友「……いる、んだ」

女「んだよ、いちゃ悪いか?」

友「……うぅん」

女「……ぷはー」

友「……ただ、少し驚いただけ」

女「似たような意味合いじゃねーかそれ」

10 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/11(月) 19:57:10.10 ID:n1OPOYoXo [3/14]
女「そういうお前はどうなんだよ」

友「……?」

女「好きな奴とか、いねーのかって」

友「……私も、いる」

女「……へぇ」

友「……」

女「……」

11 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/11(月) 20:01:08.50 ID:n1OPOYoXo [4/14]
友「……あ」

女「んな?」

友「……授業、始まっちゃう」

女「おう、行ってらっしゃい」

友「……じー」

女「ん?」

友「……授業」

女「あ、こらっ。返せ!」

友「……むー」

女「……はー、仕方ねぇ」

12 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/11(月) 20:14:39.54 ID:n1OPOYoXo [5/14]
ヒソヒソ ヒソヒソ

女「……じー」

ビクッ

女「……はぁ」

女(だから来たく無かったんだが)

女(へなちょこなの癖にこういうとこは頑固だからなぁ)

女(ま、そういう所も……)

女(……あー、だりぃ)

13 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/11(月) 20:32:37.01 ID:n1OPOYoXo [6/14]
女(どうすっかな、新しいの買うか……)

女「……ん」


友「……あ」

女「どうしたんだよ、それ」

友「……ん、少しね」

女「だから、少しってなんだよ」

友「……少しは、少しだよ」

女「……」

友「……」

14 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/11(月) 20:43:00.68 ID:n1OPOYoXo [7/14]
女「あー、そうかい」

友「……」

女「そうだな、私には関係ねーな」

友「……そう、関係ない」

女「っ」


女「ならせめてタバコは返せよ」

友「……やだ」

女「あ?」

友「……」

女「……チッ」


女(なんだってんだよ、全くよ……)

15 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/11(月) 21:10:09.44 ID:n1OPOYoXo [8/14]
女「……ふー」

女「……」

女(ダメだ、気になって仕方がねぇ)

女(確か書道部だったよな、あいつ……)

女「……あー」

女(うだうだ悩むのはらしくねぇな、行くか)

16 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/11(月) 21:47:14.34 ID:n1OPOYoXo [9/14]
女「……」

女(文系の部室棟は静かでどうも苦手だ)

女(っと、ここだここだ)

女「失礼しまーすっと」


友「……?」

女「お、丁度いい。一人か」

友「……ど、どうしてあなたが?」

女「んー、そうだな……入部希望、ってのあどうだろうか」

友「……絶対、嘘」

女「失礼な」

17 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/11(月) 22:17:29.26 ID:n1OPOYoXo [10/14]
女「楽しいのか?それ」

友「……楽しいとは少し違うかも」

友「……落ち着く、って感じかな」

女「ふーん」

友「……やってみる?」

女「え」

友「……入部希望、なんでしょ」

女「あ、あー……」

友「……はい、どうぞ」

女「よ、よーし。やってやらぁ」

18 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/11(月) 22:29:52.36 ID:n1OPOYoXo [11/14]
女(くそ、指先が震えやがる……)

友「……肩の力、抜いて」

女「そうは言うがなぁ」

友「……んしょ」

女「お、おい」

友「……?」

女(こいつ着痩せするタイプだったのか……じゃなくて)

女「逆に書きづらいんだが」

友「……そうかな」

19 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/11(月) 22:55:53.09 ID:n1OPOYoXo [12/14]
友「……そんなに力入れちゃダメ」

女「んなこと言ったってなぁ……」

友「……あっ」

女「げっ」

友「……」

女「わ、悪い。すぐに洗って……」

友「……大丈夫」

女「いや、染みになっちまうだろ。ほら」

友「……ダメッ」

女「……お前」

友「……っ」

20 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/11(月) 23:00:18.03 ID:n1OPOYoXo [13/14]
女「いつからだ」

友「……」

女「あいつらだな、それ以外ありえねぇ」

友「……大丈夫、だから」

女「大丈夫なわけあるか!」

友「……っ」

女「お前は大丈夫でも、私が大丈夫じゃない」

友「……無茶して欲しくない」

女「バカ、無茶してんのはお前だろ」

友「……」

ぎゅう

女「大丈夫だ、心配すんな」

友「……墨が」

女「げげっ」

23 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/13(水) 00:42:56.32 ID:diulgApXo [1/24]
女「さて、と」

友「……」

女「帰るか」

友「……ん」


女「次からは隠さずちゃんと言えよ」

友「……約束は、出来ない」

女「聞こえねぇ、もっかい言ってくれ」

友「……約束は」

女「……じー」

友「……出来る限りは言う」

女「うむ」

24 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/13(水) 01:00:43.91 ID:diulgApXo [2/24]
友「……私の家、こっちだから」

女「知ってるよ」

友「……あなたの家、向こうじゃ」

女「おう」

友「……」

女「別に私が遅くなっても誰も何も思わねーさ。そんな事よりお前の事の方が心配だ」

友「……あり、がと」

女「お、おう」

25 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/13(水) 01:34:42.84 ID:diulgApXo [3/24]
友「……それじゃ」

女「あぁ、また明日な」

友「……うん、また明日」

女(さて、どこで時間潰すか……)

女「……ん?」

友「……はぁ……はぁっ」

女「どうしたんだよ、息切らせて」

26 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/13(水) 01:58:44.95 ID:diulgApXo [4/24]
友「……これ」

女「ん、あぁ」

女(こんなもの返すためにわざわざ走って来たのか)

友「……それだけ、だった」

女「……待ちなよ」

友「……?」

友「……むぐ」

女「そら、顔をこっちに寄せな」

友「……」

女「そうだ、上手上手」

友「……ごっほ、げほげほっ」

女「ははは、吸いっぱなしだとそうなって当然だ」

27 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/13(水) 01:59:12.80 ID:diulgApXo [5/24]
友「……まずい」

女「だろうな」

28 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[sage] 投稿日:2016/01/13(水) 01:59:39.23 ID:diulgApXo [6/24]


29 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/13(水) 17:55:26.39 ID:diulgApXo [7/24]
友「……」

女「おいっす」

友「……遅かったね」

女「ちょいと野暮用でな」

友「……」

女「ちょっ、どこ触って……い、いちちっ」

友「……やっぱり、無茶した」

女「お前と会う前は日常茶飯事だったさ」

友「……」

30 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/13(水) 18:03:18.16 ID:diulgApXo [8/24]
友「……ごめんね」

女「何で謝んだよ」

友「……私がこんなだから」

女「それは別にお前が悪いってわけじゃねーだろ」

友「……そう、かな」

女「まぁ、私の言葉じゃ信用ならねーってんならこれ以上何も言えないな」

友「……そっか」

31 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/13(水) 18:25:38.81 ID:diulgApXo [9/24]
女「ふぃー……」

友「……じー」

女「ん」

友「……一本、いい?」

女「へ?」

友「……」

女「ん、あぁ。別に構わないけど」

友「……はぐ」

女「ほれ、火だ。気を付けろよ」

友「……ん」

32 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/13(水) 19:21:57.96 ID:diulgApXo [10/24]
女「……ふぅー」

友「……ぷぁ……ごほっ」

女「大丈夫か?」

友「……うん、平気」

女「無理して吸わなくてもいいのに」

友「……別に無理なんて、してないよ」

女「ならいーけど」

友「……」

33 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/13(水) 19:24:48.90 ID:diulgApXo [11/24]
友「……こほこほ」

女「……ふぃー」

友「……どうしたら」

女「?」

友「……どうしたらあなたみたいに、なれるかな」

女「急になんだよ」

友「……急じゃないよ」

34 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/13(水) 19:37:30.11 ID:diulgApXo [12/24]
友「……あの日からずっと、思ってた」

女「あの日って……」

友「……あなたが私を助けてくれた、あの日」

女(あぁ、やっぱり)

友「……あの日からずっと、憧れてた」

女「あぶねぇぞ」

友「わ、ちちっ……」

女「灰皿、ほら」

友「……ありがと」

35 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/13(水) 19:51:01.88 ID:diulgApXo [13/24]
女「こんなもんに憧れても仕方ねぇと思うが」

友「……そんなこと無い」

女「私はアンタの方が羨ましいけどな」

友「……どこが」

女「あー、んー……」

友「……」

女「……胸、とか」

友「……じとー」

女(あながち冗談ではないんだが)

36 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/13(水) 20:09:10.21 ID:diulgApXo [14/24]
友「……帰る」

女「あー、待て待て」

友「……?」

女「その、だな……うん。私が言いたかったのは」

友「……言いたかった、のは?」

女「そのままのお前でいいじゃないかって事だ」

友「……」

女(……確実に伝わってない顔だな)

37 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/13(水) 20:22:43.50 ID:diulgApXo [15/24]
女「私は今のアンタでも十分好きだ」

友「……」

女(って、何言ってんだ私は)

女「えーと……」

友「……私も、好き」

女「へっ」

友「……両想い?」

女「……そう、みたいだな」

友「……」

女「……」

38 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/13(水) 20:27:11.41 ID:diulgApXo [16/24]
友「……いつから?」

女「強いて言えば最初から」

友「……一緒」

女「そうだったのか」

友「……じー」

女「?」

友「……胸とかって、そういう意味だったの?」

女「……改めて言われると恥ずかしいからやめろよ」

友「……ふふ」

39 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/13(水) 20:41:09.46 ID:diulgApXo [17/24]
女「……ぬぬ」

友「……ぷっ」

女「わ、笑うなよ」

友「……ごめん、ごめん」

女(あの時の入部希望は本気じゃなかったんだが)

友「……」

女(これも悪くないな……)

友「……?」

40 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/13(水) 21:15:31.22 ID:diulgApXo [18/24]
友「……胸?」

女「お前引っ張るな、それ」

友「……いいよ」

女「えっ」

友「……触る?」

女「嫌じゃないなら……ぜひ」

友「……ん」

41 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/13(水) 21:36:27.57 ID:diulgApXo [19/24]
女「……」もみもみ

友「……んっ」

女(……こんな柔らかい物なのか)

友「……あ、ぅ」

女(どうやったらこんな大きさに……)

友「……」

女「……」

友「……満足?」

女「半々、と言ったところだろうか」

友「……何が?」

女「何がだろうか、自分でも分からん」

42 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/13(水) 21:59:12.08 ID:diulgApXo [20/24]
友「……それじゃ、今度は私から」

女「私から?」

友「……ん」

女「へ?わっ、ちょ……」

友「……ちゅ、ん」

女「んー、んー」

友「……じゅる」

女「んぅーっ」

友「……ぷはっ」

女「はーっ……はーっ……」

43 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/13(水) 22:16:17.03 ID:diulgApXo [21/24]
友「……これでお相子」

女「なわけあるか」

友「……ごめん」

女「いや、別に嫌では無かったが」

友「……私も」

女「ん」

友「……私も、大好き」

女「そう言われながら迫られると拒絶できなくて困る」

友「……ふふふ」

44 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/13(水) 22:36:02.22 ID:diulgApXo [22/24]
友「……」

女「……今度からは人の気配に気を付けような」

友「……うん」

女「さて、帰るか」

友「……ぎゅっ」

女「手、冷たいな」

友「……あなたが、温かいんだと思う」

女「そうかねぇ」

友「……そう、きっとそう」

女「お前が温まるならそれでいいや」

友「……ん」

45 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/13(水) 22:36:45.39 ID:diulgApXo [23/24]
女「……温かくなってきた」

友「……ん、温かい」

この世の果てへと至る旅路

1 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/12/26(土) 01:37:53.91 ID:rZ9Qs5coo [1/4]
「この世の果てに連れていって欲しいな」

 唐突に先輩が、そんなことを言いだした。
 僕は飲みかけのオレンジジュースを机の上に置くと言葉を返す。

「何処ですか、それ」

「行ってみれば分かるよ、きっと」

 先輩がオレンジジュースを一口しながら一言。
 いつもの戯言ならば、そのまま聞き流してしまってもよかったのだが。
 なんだか今日の先輩は雰囲気が違う気がした。

「ね、連れていってよ」

「自転車で行ける距離ですか?」

 滑稽な返答だ、と僕は自分で思った。
 自転車で行ける距離かどうかなど関係ないだろうに。

「行けるよ、きっと行ける」

 悪戯っぽい子供の様で、何もかもを悟った聖人の様でもある先輩の笑顔。
 僕の視線はそんな先輩の笑顔に釘付けになってしまう。
 
「さ、連れ出してよ王子様」
 
「……」

 差し出された先輩の手を握る。
 想像していたよりも温かい先輩の手。離したらそのまま消えてしまいそうな先輩の手。

「……エスコート致します、お姫様」

「うむ、くるしゅうない」

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2 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/12/26(土) 01:44:19.40 ID:rZ9Qs5coo [2/4]
「暑くないですか?先輩」

 荷台へ声を掛ける。

「んー、暑いよ。すっごい暑い」

 傍に居なければ聞こえない大きさの先輩の返答。
 僕はその返答を聞いて安心した。
 暑いと言われて安心するのも変な話だが。
 声が返ってこないと不安になるほど、先輩は重量感がないのだ。

「日本の夏って感じだねー」

「辛くなったら言ってくださいね。日陰探します」

「……ありがと」

 後ろを振り返る。自分の汗が前髪を伝うのが見える。
 先輩はいつも通り、平然とした顔で僕の運転に揺られていた。
 暑いと言った割に汗は全然かいていない。
 いい事なのか、悪い事なのか。

3 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/12/26(土) 01:52:10.75 ID:rZ9Qs5coo [3/4]
「ねぇ」

「はい、なんでしょうか」

 木陰で佇む僕と先輩。
 学生にとっては夏休みでも世間的には平日の街並み。
 疎らな人通りは今の僕らにとって好都合だ。

「あれ、あれが食べたいな」

「……?」

 先輩の指差した方向を目で追う。
 僕のと同じような自転車。違う所を上げるとすれば、荷台に先輩の代わりにクーラーボックスが乗っている所か。
 その自転車の主と思われる麦わら帽子のおじいさんと目が合う。
 にんまりと音がしそうな笑み。
 僕はそんなおじいさんの笑みと先輩の笑みを交互に見比べてから、財布へと目を落とした。
 あまり浪費はしたくない。
 が、先輩の願望を浪費と表現もしたくなかった。

6 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/12/27(日) 19:04:59.06 ID:2n7j/CLko [1/6]
「おいしいね」

「はい、おいしいです」

 アイスを舐めながら並んで歩く僕と先輩。
 買ったのは先輩の分だけ。僕が舐めているのはおまけで貰った分だ。

「得しちゃったね。二人で来てよかった」

「そう、ですね」

 屈託のないおじいさんの笑顔がリフレインされる。
 僕が彼氏くんと呼ばれた時、先輩は特に何も言わなかった。
 だから僕も特に何も言わない事にした。
 気にならないわけではないが、気にしても仕方ないだろうし。

7 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/12/27(日) 19:24:30.66 ID:2n7j/CLko [2/6]
「あー、おいしかった」

 先輩はアイスを舐め終わるまでに5、6回ほどおいしいを口にした。
 決して、このアイスが特別おいしいわけではないと思う。
 名残惜しそうにアイスの棒を舐める先輩。
 小動物みたいで可愛い。

「さて、そろそろ行こっか」

「了解です」

 荷台に先輩が座ったのを確認して、僕はペダルを漕ぎ出す。
 自分でもどこへ向かおうとしているのか、分からない。
 先輩に聞いてもきっと明確に答えてはくれない気がする。
 悪意ではなく、先輩も答えが分からないからだろうけれど。

「このまま行くとどこに出る?」

 商店街を抜けた辺りで、先輩が聞いていた。

「多分海……ですね」
 
 この辺からはあまり出たことがないので、僕の返答も曖昧になる。
 間違っていても咎められることはないだろうが。

「海……か。いいね、海」

 先輩の一言に僕はペダルに込める力を少し強めた。
 急ぐ必要があるかは分からなかったが、答えあわせは早い方がいいだろう。
 

8 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/12/27(日) 20:15:07.89 ID:2n7j/CLko [3/6]
「キミは海、よく来るの?」

「いえ、ほとんど。海に繋がってるかどうかもうろ覚えでした」

 海水がギリギリ届かない辺りの波打ち際に立つ先輩。
 僕もそんな先輩に習って隣に立つ。
 この時期にしては人が少ないな、と思ったらどうやらここは遊泳禁止らしい。
 そんなことも知らなかった。

「んー、ちべたい」

 スリッパの先輩はずかずかと海の方へと進んで行く。
 スニーカーの僕はそんな先輩の様子を見守る。

「キミもおいでよー」

 ばしゃばしゃと音を立てながら先輩が振りかえる。
 日光を吸いこんでしまいそうな綺麗な黒髪。
 そんな黒髪とは逆に日光を反射してしまえそうなほど白い肌。
 僕はそんな先輩に見とれてしまった。
 アイスを舐めていた時とはまるで別人に見える。

9 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/12/27(日) 21:11:58.15 ID:2n7j/CLko [4/6]
「……あ」

 はしゃぎ気味に水音を立てていた先輩の身体がぐらりと揺れた。
 僕の視界の中でゆっくりと傾いていく先輩。
 続いて大きな水音。

「先輩っ!」

 スニーカーであることも忘れて先輩の元へ駆け寄る僕。
 水を吸って足元がどんどん重くなる。
 それでもなんとか先輩の元へと辿り着いた。

「先輩!大丈夫ですか!」

「あはは、少し足をとられちゃったよ」

 全身から水を滴らせながら笑う先輩。
 顔色は悪そうに見えない。ひとまずは安心だろうか。

「歩けますか、先輩」

「大袈裟だなぁ」  

10 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/12/27(日) 21:40:58.90 ID:2n7j/CLko [5/6]
 とりあえず波打ち際から避難してきた先輩と僕。
 日陰にいても寒いだけなので日向に並んで座る。
 この陽射しの強さだ、しばらくこうしていれば乾いてくれそうなものだが。

「……っしゅん」

 靴だけの僕はそれでいいが、全身濡れてしまった先輩はそうもいかない。
 早急に乾かさないと、風邪でもひいては大事だ。

「とりあえずこれ着てください、先輩」

 僕はTシャツを脱いで先輩へ渡す。
 汗でびしょ濡れで効果はあまりなさそうだが、無いよりはマシではなかろうか。
 
「肌着一枚で平気?」

「少なくとも、今の先輩よりは」

 小さく肩を震わせながら問いかける先輩に僕はそう言葉を返す。
 こんな状況にそぐわないかもしれないがなんだか変に安心してしまった。
 先輩が何も感じない人のように思えていたから。
 ちゃんと先輩が現実にいるものなのだと、実感出来たような気がしたのだ。

12 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/12/29(火) 12:54:45.64 ID:F1HAyKSGo [1/5]
「本当に大丈夫ですか、先輩」

「大丈夫だってば。心配性なんだから」

 服からぽたぽたと雫を垂らせながら歩く僕と先輩。
 もう少し乾かしてからにしませんか、と僕は言ったのだが。
 先輩達ての希望で出発することになったのだ。
 別に反論する気はないが、大丈夫なわけがないのも事実なわけで。
 
「ねぇ、後輩くん」

「なんでしょうか、先輩」

「水、買ってくれないかな」

「……そのぐらい、承諾の必要ないですよ」

 自販機に立ち寄り水を買う。
 喉が渇いたのだろうか、ついでに自分の分も買っておく。

13 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/12/29(火) 12:59:50.38 ID:F1HAyKSGo [2/5]
「……んっ……ぐ」

「……先輩、それは?」

 言ってからまぬけな質問をしたものだと自分で思った。
 銀色台紙に並んだ白い錠剤。
 見た目は市販の風邪薬と相違ないが、そんな生易しい物ではないのだろう。

「本当はね、持ってくる気なかったんだけど」

 僕の質問への返答代わりに先輩が口を開く。

「キミといれる時間を少しでも長くしたくってね」

 もう一度水を一飲みしてから先輩はそう続ける。
 僕の中の後悔が膨らむ音が聞こえた気がした。
 そんな覚悟が出来て僕が先輩を連れ出したかと問われれば答えはノーなのだから。
 先輩と入れる時間が少しでも長くなれば、と思ったのは事実だけれど。

14 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/12/29(火) 13:14:00.70 ID:F1HAyKSGo [3/5]
「さ、行こ」

「あの、先輩」

「ん?」

 僕の声に振り返る先輩。
 その表情に焦りや苦悶といった負の感情は見て取れない。
 そういう感情が見て取れればこの場で帰る選択肢を正当化も出来るものを。
 先輩のこういう所が僕を不安にさせる。
 
「……いえ、行きましょうか」

「しゅっぱーつ」

 怖くないですか、とか。不安じゃないですか、とか。
 いろいろ聞きたいことはあるのだけれど。
 どう答えられても納得できる気がしないので、僕は聞かない事にした

15 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/12/29(火) 14:05:39.25 ID:F1HAyKSGo [4/5]
 海岸線沿いを走る僕と先輩。
 照り付ける太陽のおかげで僕の靴はすっかり乾いていた。
 きっと先輩の服や髪も同じ状況なのではなかろうか。
 靴と違って服や髪だと状況が全く同じとは言い難いだろうが。

「また暑くなってきたねー」

「そう、ですね」

 ほんの少しずつ重くなっていくペダル。
 先輩が行きたい場所まで僕の身体は耐えられるだろうか。
 僕は元々そこまで体力があるほうじゃない。
 面倒くさいという理由で運動部に入ることを敬遠していた自分に少し苛立ちを感じてしまう。

「綺麗だねー、海って」

 先輩に言われて視線を少し水平線の方へ向ける。
 光を反射してキラキラと輝く海。
 そんな海を細い眼で見つめる先輩。
 先輩の方が綺麗だ。思っても言えないけれど、本気でそんなクサイ事を思った。

18 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/12/30(水) 23:36:34.30 ID:MCqTtFHIo
 水平線へ夕日が沈んでいく。
 その様子を僕と先輩は並んでみていた。
 凄く綺麗な光景だ。
 もっと楽しむ余裕があればなおよかったのだが。

「きれー……」

 しみじみと呟く先輩。
 さっきよりも声のトーンが低いような気がする。
 自分の気持ちを勝手に反映させてしまっているだけだろうか。
 
「来てよかったね」

 口元を緩ませながら、顔だけでこちらを向く先輩。
 折角の綺麗な黒髪が潮風でパリパリになってしまっている。

「……ん」

 自分でも全く無意識だった。
 不意に伸びた手が、先輩の髪に触れる。
 頭頂部ではなくもみあげ当たりに触っている辺り、無意識下でも僕は僕だ。
  

19 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/12/31(木) 00:21:39.11 ID:4lxiKfono [1/5]
「あはは、くすぐったいよ」

 意に介する様子の無い先輩。
 半分ほど沈んだ夕日が僕達の影を伸ばす。
 先輩は少し目を細めて僕を見つめている。
 心臓の音が手を伝わって先輩に伝わっていないか不安だ。

「あ、あの……先輩」

「なにかな?」

 これは俗に言う、いい雰囲気ってやつなのではなかろうか。
 童貞特有の勘違いというならば、別に勘違いで構わない。
 音が自分でも聞こえるほど強く喉を鳴らす。

「せんぱ……っ」

 意を決して言葉を発した僕の体が防波堤に押し付けられた。
 柔らかい先輩の感触が全身に触れる。
 鼓動が一気に早鐘を打つ。
 その鼓動の音に負けず劣らずの高音。
 サイレンの音が海岸線を通り過ぎていった。

20 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/12/31(木) 00:34:14.39 ID:4lxiKfono [2/5]
「……」

「……」

 先輩は何も言わない。
 僕も何も言えない。
 さっきのパトカーが先輩を探しているとは限らない。
 もちろん、失踪した先輩の捜索願が出ていてもおかしくはないわけだが。

「……そろそろ、行こうか」

 先輩の小さな声。
 相変わらず感情は透けてこない。
 ここで僕が取り乱しながら帰る案を提示したら先輩はどんな顔をするのだろうか。
 そんなくだらない事を考えながら僕は立ち上がった。

21 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/12/31(木) 01:00:27.52 ID:4lxiKfono [3/5]
「……んぐ」

 先輩が薬を飲んだのを確認してから自転車をこぎ始める。
 人気の無い海岸沿いは薄暗くて、明かりと呼べるものはぽつぽつと立った街灯と僕の自転車から伸びるライトの明かりだけ。
 普段通っている道はとうに通り過ぎてしまって、今は道なりに道を進んでいる状態だ。
 多少休んだとはいえへろへろの足。
 自転車の速度低下は自分でも分かる次元になってしまっている。

「少し歩こっか」

「……はい」

 気遣ってくれる先輩の言葉に強がる余裕も無い。
 このまま海岸沿いを進むとどこへ出るのだろう。
 どこの街にも繋がっていないわけはなかろうが。

「うりうり」

「……何するんですか、先輩」

 先輩が指先で僕の頬をぐりぐりしてくる。

「難しい顔、してるからさ」

 あくまでも軽い口調で先輩が言う。
 鏡があれば確認したかった。
 僕は今一体どんな顔をしているのだろう。
 暗くなければ先輩の瞳に映る自分の顔が確認できたかもしれない。

22 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/12/31(木) 01:05:29.52 ID:4lxiKfono [4/5]
「……ごめんね」

 先輩が何か言った気がした。
 きちんと聞こえたような気もする。

「……?」

 でも僕は敢えて聞こえなかった方を選んだ。
 先輩のためか自分のためかは分からなかったけれど。

24 名前:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/05(火) 11:18:00.56 ID:vBFgfpMaO [1/3]
「……ふぅ」

 立ち上る湯気の中、僕は体を脱力させた。
 お風呂がこんなに気持ち良いのは生まれて初めてかもしれない。
 顔にばしゃばしゃとお湯を被るとまた小さく息を吐く。

「……どうだ」

「あっ、はい。気持ち良いです」

「……そうか」

 貸し切りに近い湯船。
 話しかけてきたのはこの銭湯の主人であるおじいさん。
 僕がこうして安堵の息を吐けるのもこの人の厚意のおかげである。
 



25 名前:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/05(火) 11:25:13.86 ID:vBFgfpMaO [2/3]
 走り疲れてもはや足取りすらふらふらになってしまった僕。
 自転車を支えになんとか歩いて辿り着いたのがこの銭湯だった。

「わっ、銭湯だよ銭湯っ」

 へとへとな僕を元気付けるように先輩が言う。
 もしかすると単に初めて見る銭湯にテンションガ上がっただけかもしれないが、ここはいい方に捉えておく。

「……もう閉まってるみたいですよ」

「……え」

 中に明かりは付いているものの、ドアに掛けられた札は『閉店』になっていま。
 先輩が心底残念がっている。
 僕はというと、銭湯が閉まっていることよりも銭湯が閉まるような時間になっていることの方を気に掛けていた。
 

26 名前:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/05(火) 11:47:29.35 ID:vBFgfpMaO [3/3]
「……なんだ、お前ら」

 閉店の札をしげしげと眺めていた僕らに銭湯の中からガラス越しに声が掛けられた。
 先輩よりも背の小さい白髪の老人。
 老人としてもかなり歳が進んでいる方であろう。

「あの、今日はもうやってないんですか?」

 先輩がガラス越しに言葉を返す。

「……」

 潮風でパサパサの髪をした少女と汗でパリパリのTシャツを着た少年。
 そんな僕達が目を細めた老人の目にどう写ったのかは分からないが、僕らは閉店後の銭湯の中へととおされたのだった。

27 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/06(水) 00:00:49.23 ID:Z5pVxAxlo [1/7]
「……」

 僕は男湯と女湯を隔てる壁の方を見る。
 この壁の向こう側に産まれたままの姿の先輩がいるわけだ。
 なんてことを考えてしまったらもうダメだ。
 意識が全て壁の方へ吸いこまれてしまう。

「きもちーねー、後輩くん」

「っ」

 突如先輩の声が響いてきた。
 完全に不意を突かれた僕はばしゃんと音を立てて湯船へ沈む。

「どしたのー?」

「なんでもないですー」

 先輩の声に釣られて間延びした声が出た。
 頭がふらふらする。
 湯冷めしないうちに出た方がいいかもしれない。

28 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/06(水) 00:52:31.79 ID:Z5pVxAxlo [2/7]
 浴室から出ると、鈍い音を立てながら乾燥機が回っていた。
 僕はタオルを腰に巻くと、その鈍い音の正面に座る。
 先輩と一緒に旅へ出なければ一生経験することがなかったような経験。

「……勝手に洗わせてもらったが」

「いえ、助かりました」

「……そうか」

 それだけ言っておじいさんは男湯の脱衣所から出ていってしまった。
 なぜおじいさんはここまでしてくれるのだろう。
 こういうのを聞くのは少々無粋なのかもしれないが。

29 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/06(水) 01:40:39.50 ID:Z5pVxAxlo [3/7]
 体の疲労が大分解消された僕は脱衣所の前で先輩を待っていた。
 先輩にとっては初体験の事ばかりだろうし色々心配なのだが。
 だからと言ってここで女湯の脱衣所へ入って行くのもおかしな話だ。
 悶々としながら僕は待つ。

「あ、待たせちゃったかなー」

 程なくして現れた先輩。
 水気の残った髪が頬に張り付いている。
 ほんのりと蒸気した頬。
 病院に居た時や並んで歩いていた時ともまた違う印象。
 まぁどの先輩も魅力的なのだけれど。

32 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/06(水) 22:21:25.02 ID:Z5pVxAxlo [5/7]
「ありがとうございました」

 僕はおじいさんに深々と頭を下げた。
 もう動けないとまで思っていた体の疲労は大分解消されている。
 その代わり逆にもう動きたくないと言う感情も湧いてきたが。

「……行くのか」

 おじいさんは先輩と僕を交互に見てから呟くように言った。
 こんな時間に出歩いている理由は聞いてこない。
 聞かれても困るけど。

「ありがとう、おじいさん」

「……うむ」

 おじいさんは何か言いたげに見える。
 だが何も聞いてこない。
 理由も無く助けるはずがない、というのは僕が捻くれているだけなのだろうか。
 外へと向かう先輩の背中を見ながら僕は財布を開けた。

「……いらん」

 既にお札に指を掛けていた僕。
 その言葉を聞いて財布から手を離すとおじいさんの方を向いた。
 正直、状況を考えると素直に受け入れるのが正しいのだが。

33 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/06(水) 22:43:04.15 ID:Z5pVxAxlo [6/7]
「どうしてここまでしてくださるんですか」

 ここで聞かない人の方が少ないのではなかろうか。
 そんな風に自分に言い訳しながら僕は疑問を口にした。

「……」

 おじいさんは僕の方を見ていない。
 去って行った先輩の背中を追うように出入り口の方を見ている。
 答えにくい事だったりするのだろうか。

「……その金はあの子に使ってやってくれ」

 今度はちゃんと僕の方を向いておじいさんが言う。
 僕の質問の答えにはなっていないが。

「……お世話になりました」

 優しい人もいるものだ、と納得して僕はもう一度頭を下げた。
 そしてそのままおじいさんの方は見ずに出入り口へ向かう。

34 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/06(水) 23:43:15.69 ID:Z5pVxAxlo [7/7]
「夜になっても涼しくはならないねー」

「お風呂に入った直後なのもあるかもしれません」

「あ、そっかぁ」

 傍から見ると滑稽に聞こえるであろう会話だ。
 先輩は小さく笑っている。
 僕も釣られて笑った。

「これからどうしましょうか、先輩」

「んー……」

 先輩がここにきて初めて悩む素振りを見せた。
 何か心境の変化があったのだろうか。
 僕は悩んでない時間が無いような状況なのでむしろ今更ではあるけども。

「あっち、あっちに行ってみよう」

 悩んだ末に先輩が指差した方向は街とは反対方向だった。
 僕は何も答えずサドルを跨ぐ。
 直後、荷台に何かが乗った気配。
 喉を鳴らす音も聞こえた。
 音が止まるのを待ってから、僕はゆっくりとペダルを漕ぎ出した。
 
35 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/07(木) 00:00:02.72 ID:ldVDz/rRo [1/3]
『病院に帰ろう、連れていって』

 先輩がそう言いだすのを僕は待っているのかもしれない。
 待つ必要なんてないだろうに。
 自転車を漕いでいるのは他ならぬ僕なのだから。
 先輩を連れて帰ることはそう難しい事じゃないはずだ。

「銭湯って洗濯機あるんだね、初めて知ったよ。キミは知ってた?」

「いえ、僕もほとんど利用した事無かったので」

「そうなんだ」

 先輩は相変わらず他愛もない会話を続けている。
 事は僕が思っているほど重大ではないのだろうか。
 誘拐未遂騒ぎがどうのと言う話はどうでもいい。
 先輩の身体が平気ならなんだって。

36 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/07(木) 00:36:17.51 ID:ldVDz/rRo [2/3]
 どのぐらい走っただろうか。
 立ち並んでいた建物がだんだんと疎らになり、その代わりに自然が増えてきた。
 街灯もほとんど無く、車の往来もほとんどない。
 まるで世界に先輩と二人だけになってしまったような感覚。
 先輩の息遣いが大きい音に聞こえた。

「どの辺りまで来たんだろうね」

 先輩がぽつりと呟く。
 とても小さい声なのに、まるで音叉のように反響して耳に響いた。

「確認してみますか?」

 僕は自転車の速度を落としながら尋ねる。
 
「確認できるの?」

「多分、大丈夫だと思います」

 僕は自電車を止めると、スマートフォンを操作してマップを起動した。
 山間に位置するので少し心配だったが、右往左往しつつも矢印が停止する。
 アテも無く走っていたが結構な距離を来たものだ。
 もし捜索願が出ていたとしてもそう簡単に見つかる距離ではなくなっている。
 その事実がまた少し僕の胸にちくりと刺さった。
 
39 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/08(金) 01:35:16.26 ID:KFhz6mwno [1/13]
「どの辺りまで来たかそれで分かるの?」

 スマートフォンを覗き込んでいた僕の耳元に先輩の声。
 続けて先輩の顔がにゅっと僕の首元を掠めながら現れた。
 先輩の髪に首筋を撫でられて僕の身体が思わず身震いする。
 心臓の鼓動も当社比5割増しだ。

「どこを見たらいいの?これ」

「あ、えと……ですね」

 先輩の細い指がスマートフォンを奪い取ろうとする。
 その過程で僕の手と先輩の手が触れた。
 なんて冷たい肌なのだろうか。
 僕の体温が吸い取られるような錯覚すら覚えるほどだ。
 それで先輩の身体が温かくなるなら、それはそれで構わないけれども。

40 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/08(金) 02:00:34.75 ID:KFhz6mwno [2/13]
「ここが病院?」

「ですね」

「結構遠くまで来たんだね」


 先輩は僕から受け取ったスマートフォンをまじまじと眺めている。
 電子機器が珍しいのだろうか。
 事実、先輩がそういうものを使っているのを見た記憶は一切ない。

「はい、返すよ」

 また先輩の指が触れた。
 さっきは感じる余裕の無かった感触を味わう。
 柔らかい。
 自分の指とは根本的な構造が違うとすら感じるほどに。

41 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/08(金) 02:06:05.32 ID:KFhz6mwno [3/13]
「さっきからどうしたの?」

「へっ?」

 自分でもどこから出したか分からない声が出た。

「心ここにあらずって感じがするよ。もしかして疲れた?」

「えと、その……」

 疲れていないわけではないけれど、心ここにあらずな理由は全く別なものなので。
 というか思いっきり先輩に察知されてしまっていた事が恥ずかしい。
 僕はどもりながら思わずたじろいでしまう。

「少し休もっか」

「……はい」 

42 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/08(金) 02:29:36.82 ID:KFhz6mwno [4/13]
「……んぐ」

 僕と先輩は道の外れに転がっていた大きなコンクリート片に腰を下ろした。
 元がなんだったのかは分からないが、風化による削れで腰掛けに丁度良いのは確かだ。

「いよっと」

 先輩が握っていた薬の銀色台紙を放り投げる。
 中身が無くなったのか、はたまた薬を飲む気が失せたのか。
 どちらにせよ先輩が薬を飲むことはもうないのだろう。

「もう平気?」

「はい、大丈夫です」

 元から平気だったのだが、なんて余計な事は言わずに僕は答える。
 僕の返答を聞いて先輩は立ち上がり自転車の方へ向かった。
 帰ろう、の一言は出てこない。
 僕らは同じ方向へまた進み始めた。

45 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/08(金) 22:45:52.34 ID:KFhz6mwno [6/13]
 何度目か分からない休憩。
 山が近くなってきたせいか傾斜や凹凸が大きい道が多くなってきた。
 先輩が人ひとりの重さを持っていたらきっとここまでこれなかっただろう。
 人ひとりの重ささえ持ってないから心配なのだけれど。

「……ふー」

「大丈夫ですか?先輩」

 僕は思わず先輩に聞いてしまった。
 聞くつもりは無かったのだが、完全に脊髄反射的に言葉は出てしまって。
 要は無意識的に聞いてしまうほど気になっていたのだろう。

「へ?何が?」

「いえ、気のせいならいいんです」

 やっぱり濁された。
 いや、自覚が無いのかもしれない。
 そっちの方がよっぽど危険な気がする。

「そこで止められると凄い気になっちゃうなぁ」

「……すいません」

「謝られても困っちゃうけど」

 先輩が困ったように微笑んだ。
 深く息を吐くことが増えてますが大丈夫ですか、と言わなかった自分を褒めたい。
 先輩が喉を鳴らす音を聞かなくなってから結構経っている。
 何も無いわけがない。
 聞いて先輩の身体がよくなるなら何度でも聞くが。

46 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/08(金) 22:55:16.34 ID:KFhz6mwno [7/13]
「ほらまた」

「……あ」

「凄く難しい顔、してる」

 先輩の人差し指が僕の額をこつんと突いた。
 僕の目の前に先輩の顔がある。
 白くて儚くて、なんだかすごく存在が希薄に感じてしまう。

「……ごめんね、厄介な事頼んじゃって」

 今度は聞こえないフリ出来ない状態で謝られた。
 どう答えるのが正解なのだろうか。
 大丈夫です、気にしないでください。
 謝るぐらいなら最初から、言わないでください。
 ここまで来たんですから、最後まで付き合いますよ。
 色々と言葉は浮かんではきたけれど、そのどれも音になる前に喉元で潰れていった。
 どの言葉も先輩を引き留めることは出来なさそうだから。
 無駄な言葉を発すれば、先輩が更に遠くなってしまいそうだから。

47 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/08(金) 23:04:52.91 ID:KFhz6mwno [8/13]
「ここがこの世の果て、かなぁ」

 先輩がごろりと草むらの上で横になった。
 気楽にごろんといった風ではなく、横になるのも億劫と言った感じで。

「まだ行けますよ」

 僕は思わず声を上げた。
 先輩が遠くなってしまいそうだなんてかっこつけている場合ではない。

「うん、分かってる」

 先輩は起き上がることなくゆっくりと目を閉じながら答える。
 嫌な汗が僕の頬を伝った。
 よく見たら先輩の額にも大粒の汗が浮かんでいる。
 全く気付かなかった。
 いや、先輩なら大丈夫だなんて勝手に考えて気付こうとしていなかっただけか。

「私の方がね、結構限界みたい」

 先輩に言わせてしまったことを後悔した。
 やっぱり余計な事は言わない方がいい。

48 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/08(金) 23:20:25.12 ID:KFhz6mwno [9/13]
「何故こんな事をしようと思ったんですか」

 そんな僕の意志とは裏腹に言葉が口から飛び出してきた。
 ここまでやらせておいて何も教えてくれないのか、という怒りというか悲しみというか。
 そんな僕の中でぐるぐる回っていた感情が音になって飛び出したのかもしれない。

「んー、なんでだろう?突然だったんだよね、思いついたの」

 先輩は務めて平静に答えを返してくる。
 それが僕の中にある言い知れない感情をさらに煽った、気がした。

「両親は優しいし、お医者さんも全力で頑張ってた」

 言葉を続ける先輩。
 それは僕に語りかけているようでもあり、独り言を上の空で呟いているようでもあった。

「不満は自分の身体の事だけ。だからこんな事したのかな……ごほっ、ふっ……く」

「先輩っ!」

 そこまで言って先輩が大きく咳き込んだ。
 横たわった先輩の身体が大きく跳ねるほどの咳。
 僕はすぐに先輩の傍へ駆け寄った。

49 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/08(金) 23:33:02.28 ID:KFhz6mwno [10/13]
「死にたいわけじゃなくて……生きるのが辛くなった、だけ」

 先輩が僕の肩を掴む。
 あまりに弱弱しい手の平。
 付いていた血が僕の肩にじんわりと滲む。

「キミにしか頼めないと思ったんだ。ごめんね」

 先輩が言いたいことを言い終えたと言った感じで沈黙する。
 僕は全身で先輩の身体を支えた。
 重い。僕は本当にこの人をここまで運んできたのだろうか。

「……ふー……ふー」

 先輩はまだ生きている。
 まだ生きている、と言う次元の状態ではあるが。
 どうするのが正しいのだろうか。
 僕は考えようと思ってやめた。
 正確に言えば考えるまでも無かった。

50 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/08(金) 23:38:12.04 ID:KFhz6mwno [11/13]
 僕は先輩を背中に背負って走り出す。
 最初からここまで来なければよかったじゃないか。
 このまま先輩が死ねばお前のせいだぞ。
 なんて湧きあがってくる思考に今は蓋をして。

「すいません、先輩」

「……」

 もう聞いているかは分からないが、僕は先輩に謝罪を口にした。
 ここまで連れ出した謝罪もある。
 生きるのが辛い先輩をまた辛い世界へ引き戻してしまう事への謝罪も含めた。
 きっと先輩も僕と同じだったのだろう。
 止めて欲しいけど、自分では言い出せなくて。
 涙を流しながら僕は走った。

51 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/08(金) 23:39:35.72 ID:KFhz6mwno [12/13]
 走って、走って、走って、走って。
 気付けば僕は突っ伏していた。
 全身が痛い。
 立ち上がろうとして驚く。
 体に全く力が入らなかった。
 ここまで疲労していたのか、僕の身体は。
 瞼が重くなる。
 先輩は無事だろうか。
 このまま僕も死んでしまえばいい。
 そんな事を考えていたような気がする。
 
54 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/10(日) 00:52:05.16 ID:YSY4iPZSo [1/5]
 気が付いたら僕は天井を見上げていた。
 見たことのある天上だ。
 僕は体を起こそうとしてふと気付く。
 身体が動かない。
 拘束されたりしてるわけではないので、いわゆる意思に反してと言うやつだ。
 それでも何とか動こうとして僕はガタンと身を揺らす。
 そんな僕の動きに近くの看護師さんが気付いた。

「先生、患者さんが目を覚ましました!」

 辺りが慌ただしさを増していく。
 僕はそんな喧騒から逃れるように目を閉じた。
 後で聞いた話なのだが僕はどうやら3日程眠っていたそうだ。
 そんなに眠った自覚はないし、そんな経験なかったので実感は全くなかったが。

55 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/10(日) 01:12:09.60 ID:YSY4iPZSo [2/5]
「おはよう、寝坊助さん」

「おはようございます」

 動けるようになってすぐ、僕は先輩に会いに行った。
 僕が気を失った直後に僕らは巡回していたパトカーに保護されたらしい。
 あと数分遅れていたら危うい状態だったらしく、僕の頑張りは無駄ではなかったとの事。
 そもそもの原因が僕であった事について、大人達はあまり大きく責めなかった。
 
「この世の果てに連れていって欲しいって言ったのに」

 たくさんの管に繋がれた先輩の声は、囁くようにか細い。
 
「……すいません」

 その声に釣られて僕の声も小さくなる。

「……恨むよ」

 先輩は天井を見ながら話している。
 僕は先輩をじっと見つめながら言葉を返す。

「……構いません」

 先輩の顔がゆっくりとこちらを向いた。
 悪戯っぽく微笑んでいる。
 それは僕が想定していた表情とあまりにも違っていて、僕はぽかんとした顔で先輩を見つめた。

56 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/10(日) 01:21:19.19 ID:YSY4iPZSo [3/5]
 先輩の左手の小指が弱弱しく伸ばされた。
 何事か分からない僕。
 しばし見つめ合う僕達。

『ゆ、び、き、り』

 先輩の口の動きからなんとかそう読み取れた。
 僕はそっと左手を差出すと、先輩の小指を自らの小指で絡め取った。

『ま、た、ね』

 先輩が最後に言った言葉は、きっとその三文字だ。
 ここで言う最後というのは今際の言葉ではなく、単に先輩が眠りに付いたと言うだけの事。
 僕はひんやりとした先輩の感触を残した小指をぎゅっと握ると病室を後にした。

57 自分:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga] 投稿日:2016/01/10(日) 01:23:30.47 ID:YSY4iPZSo [4/5]
「あれ、こんなに近かったんだ。ここ」

「あの時は自転車でしたからね」

「なんだか寂しい感じがするなぁ」

「今度は自転車で来ましょうか」

「お、いいね。それ」

「もうあんな無茶はゴメンですが」

「ふふふ、約束は守ってもらうよ」


「今度こそ連れていってね、この世の果てまで」

「……エスコート致します、お姫様」

「うむ、くるしゅうない」

姉「私の義妹」妹「私のお姉ちゃん」

1 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/19(木) 19:08:57.18 ID:HzgNaAfUO [1/6]
義妹が私の妹になったのは、私がまだ中学生に上がりたての頃。
明るそうな母親とは対照的に、おどおどと母親の背に隠れる姿は昨日の事のように鮮明に思い出せる。
きっと私の顔が怖かったのだろう。
離婚だの、再婚だの、色々立て込んでいたから。
そのせいで私は妹の中で「怖いお姉ちゃん」になってしまったのではなかろうか。

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2 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/19(木) 19:13:27.43 ID:HzgNaAfUO [2/6]
「……お姉ちゃん、起きてる?」

「ん……起きてるよ」

「お母さんが、朝ご飯って……」

「あー、今行く」

「……」

「……もう行っちゃったか」

3 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/19(木) 19:19:35.25 ID:HzgNaAfUO [3/6]
私は大きく欠伸をすると、一階へ降りてリビングへ向かった。
朝が苦手な私はいつも妹に起こしてもらっている。
全国のシスコンが聞いたらガタッとなるシチュエーションだろう。
半開きのドアに顔半分隠しながら、ビクビクと声を掛けてくる妹というのも、人によってはご褒美だろうか、
私としては不本意なのだが。

4 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/19(木) 19:24:17.65 ID:HzgNaAfUO [4/6]
「おはよう、お寝坊さん」

「……おはようございます」

「パンとご飯、どっちにしましょうか」

「パンで」

「いつもの?」

「いつもので」

5 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/19(木) 19:32:11.36 ID:HzgNaAfUO [5/6]
いつものぎこちない会話。
別にこの人のことが嫌いなわけじゃない。
きっと私は母親という存在そのものが苦手なのだろうと思う。
それは誰であっても変わりないのだろう。
そんなことを考えながら歯を磨き、適当に髪を整える。
制服に着替えながら、再び大欠伸。
誰に向けるでもない挨拶をしながら、私は学校へ向かった。

9 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/19(木) 21:13:48.63 ID:jHptHv4BO [1/5]
「朝から不景気な顔してんね」

「……ほっとけ」

「おー、こわ」

「妹ちゃんに言いつけちゃおっかなー」

「……ぐ」

「冗談だよ、じょーだん。そんな怖い顔すんなって」

「……生まれつきだっての」

10 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/19(木) 21:22:16.97 ID:jHptHv4BO [2/5]
こいつは私の数少ない友人。付き合いの長さだけで言えば、妹よりも長い。
こんな奴だが実際親友と呼んでも良い存在だ。
しかしよりにもよって妹はなぜこいつのいる部活へ入ったのか。
そのせいで弱みでも握られたかのように度々こんなイジりを受けてしまう。
いやまあ、妹に悪気はないのだろうし、そもそもなにも悪くないのだが。


11 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/19(木) 21:25:26.37 ID:jHptHv4BO [3/5]
「しっかし、あんたは相変わらず見てて飽きないわ」

「……?」

「すぐ顔に出るからさ、からかい甲斐があるよ」

「顔に出てるのか、私は」

「そりゃもう、ありありと」

「……そ、か」

12 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/19(木) 21:28:09.51 ID:jHptHv4BO [4/5]
多分それは、こいつにしか分からないことなのだろう。
そんなところに私は助けられている。
しかしながら、本当に伝えたい相手には全く伝わっていないのだ。
助けられてばかりではいけないという事なのだろうか。
私は一番後ろの席で、窓に向けてため息を吐いた。

15 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/20(金) 18:05:42.35 ID:w1noihB1O [1/14]
(……お、一年は体育か)

(あいつ、相変わらず足遅いなー……陸上部なのに)

(あ、こけた……)

(……)

「あてっ」

「おう、随分と余裕そうじゃないか」

「……」

「なんだ、文句でもあるのかその顔は!」

(なんも言ってないのに)


16 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/20(金) 18:11:14.55 ID:w1noihB1O [2/14]
私は努めて普通だ。
いや、普通にしているつもりになっているだけなのだろうか。
こんな理不尽な怒られ方をするのも初めてではない。
前の母親にもよく言われていた気がする。
あまり思い出せない、思い出したくないの間違いだろうか。
先程こけた妹の姿は思い出せる。微笑ましい姿に少し頬が緩んだ。
こんな風にいつでも笑えればいいのかもしれない。
私にはとても難しいことに思えたが。

17 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/20(金) 18:17:49.30 ID:w1noihB1O [3/14]
「今日は何パンにしようかなー」

「……焼きそばの気分だな」

「んー、私はコロッケだね」

「……」

「……」

「じゃん」

「けん」

「ぽんっ」

「やりっ、今日も私の勝ちぃ」

「……次は負けんぞ」

「はっはっはっ、いつでも掛かってきなさい」

18 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/20(金) 18:34:56.77 ID:w1noihB1O [4/14]
うちの学校の購買は、漫画などであるように争奪戦になったりはしない。 
食堂がある上に弁当持ち込みも可能なので当たり前といえば当たり前だが。
まず友人に頼まれたパンを摘み上げると、次に自分のお目当てへと手を伸ばす。
その時、不意に伸ばされた誰かの指先が触れる。
私の焼きそばパン気分を邪魔するとはいい度胸ではないか。
私は伸びてきた手を視線で辿る。

19 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/20(金) 18:40:37.90 ID:w1noihB1O [5/14]
「……あ」

「……お」

「あ、えと……ご、ごめんなさいっ」

「おい、待てよ」

「……」

「持ってけ。おごりでいい」

「え、でも……お姉ちゃんの分が」

「私は……本当はコッペパンの気分だったんだ」

「おばちゃん、会計お願い」

「……お姉ちゃん、ありがとう」


「それでコッペパンなのか、ウケる」

「……うるさい。コロッケ部分だけ齧り取るぞ」

「そりゃ勘弁」


20 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/20(金) 18:58:07.16 ID:w1noihB1O [6/14]
放課後、私は教室に残り何をするでもなく校庭を見ていた。
野球部の声出しやサッカー部のランニング、実に青春と言った光景である。
昔、部活に所属していた頃を思い出す。
とは言っても、私の部活に対する態度
はあんな汗と涙の結晶という感じではなくて。
身体を動かしている間は色々なことを忘れられるから、そのためだけにやっていた節がある。

22 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[sage] 投稿日:2015/11/20(金) 20:29:48.87 ID:w1noihB1O [8/14]
「こらー、用の無い生徒は早く帰らんかー」

「……何してんだ?お前」

「つまんない反応だなー……てか、それ私のセリフ」

「部活はどうした」

「大会前は自主練。その程度のことも話さないんだ」

「……」

「もーすこし仲良くしてあげりゃいいのに」

「そう簡単な話じゃない」

「そうかね?」

「そうだよ」

23 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/20(金) 20:37:38.62 ID:w1noihB1O [9/14]
部外者だから気楽に言える。
部外者だからこそ、気楽に言ってくれる。
私は帰路に着きながら言われた言葉を反芻していた。
本当は簡単な話なのだろう。
私達は姉妹だ、仲良くしていても不自然ではない。
妹が望んでいるのかは知らないが、少なくとも私はそれを望んでいる。
いや、それだけなのだろうか。
この違和感がいつも、私の邪魔をする。


24 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/20(金) 20:39:24.90 ID:w1noihB1O [10/14]
「……お、おかえり。お姉ちゃん」

「ん、ただいま」

「……あ、あの」

「どした」

「今日のお昼……ありがとう」

「別にいいって」

「う、うん……」

「……」

「……」

25 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/20(金) 20:46:20.38 ID:w1noihB1O [11/14]
いつも弁当なのになぜ購買にいたんだとか、大会前だったんだな、とか。
会話の種はたくさん落ちているはずなのに、私はそれらが芽吹く前に全て摘み取っていく。
そのせいで妹は、困ったような顔で私を見ることしか出来ないのだろう。
不器用な私、とでも言えば少しは自己弁護できるだろうか。
私は鏡の前で苦笑した。
やはり私には難しいよ。

26 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/20(金) 21:07:05.49 ID:w1noihB1O [12/14]
「たっだいまー」

「おかえり、お父さん」

「あれ、お母さんはまだ帰ってきてないのかい?」

「今日は夜勤の日でしょ」

「あれ、そうだったっけ……」

「アルツハイマー?」

「まだそんな歳じゃないと信じたいね」

「すぐに夕飯の支度するね」

「いつもありがと。でも、お腹空いたら先に食べててもいいんだ」

「うん、分かってる」




27 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/20(金) 21:18:32.90 ID:w1noihB1O [13/14]
私は母があまり好きでは無かったが、私は母に似ていると自分で思う。
だから母があまり好きでは無いのかもしれない。母もそうだったのかもしれない。
父が私を気にかけてくれているのは分かっている。
だからこそ私はこんな私もあまり好きではない。
静かな食卓。
どこもこうなのだろうか、他所は違うのだろうか。
どうでもいいことを考えて、また会話の芽を摘んでいる気がする。
だがどうしようもない。
そう、どうしようもないのだ。

30 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/21(土) 19:57:11.26 ID:OumhvGLVO [1/11]
「お、お姉ちゃん……」

「どうした、何かあったのか」

「た、タオルを忘れちゃったみたいで」

「ん、待ってな」


「ありがとう、お姉ちゃん」

「……」

「おねぇ、ちゃん?」

「あ、いや。どういたしまして」

「……?」

31 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/21(土) 20:03:22.10 ID:OumhvGLVO [2/11]
思わず見蕩れた、なんてとてもじゃないが口に出来るわけがない。
ここ数年で妹は急に大きくなっている。もちろん背の話ではない。
きっと母親に似たのだろう。私は似ていない。当たり前だが。
別に大きいから好きとか小さいから嫌いとかいう気はないが、やはり大きいと目に付く。
不審に思われていないといいが。

32 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/21(土) 20:09:30.99 ID:OumhvGLVO [3/11]
「確かにあの子のナイスバディーは破壊力あるよね」

「……セクハラとかしてないだろうな」

「ま、まつまさかー……あはは」

「……」

「ま、だけだ陸上向きではないよねー」

「こっち見て言ってないか」

「そりゃ被害妄想ってやつだ」

「お前よりはあると思うが」

「は?」

33 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/21(土) 20:15:15.16 ID:OumhvGLVO [4/11]
私が変なわけではない。
笑い話にして濁してしまえばそう思える気がした。
気持ちが晴れるわけではないが、少なくとも誤魔化してはしまえる。
どこぞのパパでないが、これでいいのだ。
これでないといけない。

34 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/21(土) 20:19:11.81 ID:OumhvGLVO [5/11]
「そういや」

「む?」

「さっき妹ちゃん、知らない男の子と歩いてたなぁ」

「……そりゃまあ、そういう事もあるだろ」

「ありゃ屋上前の踊り場に行くつもりだろうね」

「誰も聞いてないだろ」

「……ぷっ、ひでぇ顔」

「誰のせいだ」

「あんたが一番よく分かってんでしょ」

「……顔洗ってくる」

「はいはーい」

35 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/21(土) 20:22:59.95 ID:OumhvGLVO [6/11]
私をからかうための嘘かもしれない。
いや、本当だとしても私には関係ない。
だと言うのに、私の足は引き寄せられるように階段を登っていく。
手洗い場はとうに通り過ぎた。どんな顔をしているのだろう。
せめて妹を怖がらせない顔であるとよいのだが。

36 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/21(土) 20:27:13.64 ID:OumhvGLVO [7/11]
「ぼ、僕じゃダメかな……?」

「……ごめん、なさい」

「どうして?他に好きな人でもいるの?」

「……」

「他にいないなら、とりあえず僕でも……」

「い、いやっ……」


「……おい」

「……?」

「……ひっ、す、すいませんっ!」

37 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/21(土) 20:31:52.33 ID:OumhvGLVO [8/11]
自慢ではないが、私はでかい。もちろん妹のでかいとは違う方向でだ。
年頃の女の子としては男子にビビって逃げらるような大きさは、ほんとの意味で自慢にならない。
だが今だけは役に立って助かったと思える。
ただの告白なら見届けるのもやぶさかでは無かったのだが。


38 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/21(土) 20:33:04.83 ID:OumhvGLVO [9/11]
「大丈夫か」

「う……う、ん」

「無理するな、しばらくそうしてろ」

「……ぎゅぅ」

「……よしよし」

39 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/21(土) 20:35:39.42 ID:OumhvGLVO [10/11]
妹の髪から、甘い香りがする。
同じシャンプーのはずなのに、何が理由でここまで違うのだろう。
震える妹の肩に触れる。
きっと私はただの告白でも邪魔してしまっていたかもしれない。
臆病な妹。愛しい妹。
守れるのは私だけ、なんて言葉はエゴだろうか。

47 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/21(土) 23:57:39.63 ID:nizCjGOxO
「落ち着いたか?」

「……うん、もう平気だよ」

「今後は気を付けろ。今回は私がいたからよかったけど……」

「……」

「……?」

「……知ってた、から」

「へ?」

「お姉ちゃんがいるって、知ってたから」

48 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/22(日) 00:03:04.71 ID:g7r4Wkj4O [1/8]
顔を真っ赤にしながら、私を見つめる妹。
そんな妹が今しがた発した言葉に私は固まる。
今いる場所から私が先ほどいた場所は死角になっていて見えないはずだ。
それなのに知っていたとは、どういうことだろう。
と言うか知られていたとしたら、偶然ではなく追ってきていたこともバレていたのか。
自分の顔が確認出来ないが、目の前の妹のようになってないか心配だ。

49 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/22(日) 00:16:22.53 ID:g7r4Wkj4O [2/8]
「ここからは死角の場所に隠れていたのだが」

「……うん」

「なら何故私がいると……」

「……先輩が、言ってたから。多分お姉ちゃんが来るって」

「先輩……」

(あいつ、最初から知ってやがったのか。あとでぶっ飛ばす)

「……もし、いなかったらどうしてたんだ」

「信じてたから、考えてなかった」

「……」

「……」


50 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/22(日) 00:21:46.71 ID:g7r4Wkj4O [3/8]
妹がそんな風に思っていたとは思わなかった。そんな風に思って欲しいとは思っていたが。
必死に言葉を紡いだ反動か、妹は俯いて何も言わなくなった。
次は私が必死になる番なのだろう。
頬が熱い。
鏡なんて見なくても分かる。
姉妹揃って同じ顔だ。

51 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/22(日) 00:25:59.08 ID:g7r4Wkj4O [4/8]
「他に好きな奴が出来たら、いつでも言っていい。それまでは私を好きでいてくれ」

「……うん」

「大好きだ、妹」

「私も大好き、お姉ちゃん」


「……っ」

「……ん」



52 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/22(日) 00:31:39.68 ID:g7r4Wkj4O [5/8]
今後どうなるかは分からない。
ただ確実に言えることは、私は今後妹以外にこの感情を持つことなど出来ないだろうということ。
それが、私にとっても妹にとってもいい未来をもたらさないことを知っていても。
今はただ、このままでいさせて欲しい。
心を奪われたあの日から、ずっと願っていたことなのだから。

53 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/22(日) 00:33:34.19 ID:g7r4Wkj4O [6/8]
「……」

「……」

「……今日、部活は?」

「大会前だから、自由参加だよ」

「一緒に帰るか、どうせなら」

「……うんっ!」





54 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/22(日) 00:40:56.00 ID:g7r4Wkj4O [7/8]
その日は初めて妹と一緒に帰った。
初めて手を繋いだし、色々初めてばかりで目が回りそうだ。
帰り道に私たちは色々な話をした。
私が心配してくれてる事を最初から知っていた事。
そしてそんな私に上手く言葉を返せない自分が歯がゆかった事。
妹も似たような気持ちだったのだと知って、私はつい口元が緩むのを感じた。
似た物姉妹だ。
それだけの事も、今は感無量である。

57 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/22(日) 11:16:10.34 ID:JDjEebc3o [1/10]
「……ただいま」

「おかえりー、って。あれ?」

「ただいま、お母さん」

「珍しいわね、二人一緒になんて」

「……うん」

「今後はそうでもなくなるかも」

「あら?」

「……かも」

「あらあら?」

58 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/22(日) 11:28:26.66 ID:JDjEebc3o [2/10]
その日は珍しく、4人で食卓を囲んだ。
母は嬉しそうに私達を見つめ、そんな母を見て父は嬉しそうに笑い、そんな両親を見て私達もはにかんだ。
きっと仲良くなってくれた事を喜んでくれているのだろう。
実はそれだけじゃなかったりするのだが、今は余計な事を言わないでおく。
いつかは知られてしまうか、知らせないといけないのだろうけれど。
今はとりあえず、妹の笑顔を堪能しておこう。

59 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/22(日) 11:35:36.99 ID:JDjEebc3o [3/10]
「……ふぅ」

「お、お姉ちゃん?」

「ん、どうした」

「い、一緒に……入っても、いい?」

「……」

「……」

「……いいよ、おいで」

「お邪魔、します」

60 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/22(日) 11:43:29.41 ID:JDjEebc3o [4/10]
自分ちの風呂に入るのにお邪魔しますはないだろう、私は妹の頭を洗いながら小さく笑った。
妹はえへへと小さく笑い、私にされるがままだ。
二人で湯船に浸かり、向かい合う。狭い湯船なので少々窮屈だが、その窮屈さも今は悪い気分ではなく、むしろ好印象だ。
妹はどう思っているだろうか。
部位に差がある分だけ私よりも窮屈さを感じていないだろうか。
もっと話がしたい。口下手なのが口惜しい。

61 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/22(日) 11:59:44.06 ID:JDjEebc3o [5/10]
「……お姉ちゃん、いい匂い」

「そうか?自分じゃよく分からんな」

「……んーっ」

「く、くすぐったいぞ」

「ご、ごめん……」

「いや、謝らんでいい」

「へ?」

「こっちからもするからな」

「ひゃんっ……」

「……」

「……」

62 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/22(日) 12:04:39.57 ID:JDjEebc3o [6/10]
口下手なりに、色々話した。
運動部に入った理由は、私のように強くなりたかったとの事。
陸上部を選んだのは、やはりアイツがいたからとの事。
一緒の布団の中で、色々話した。
もちろん私からも話した。
私は強くなんてない事。
一目惚れの事。
気付けば外が明るくなるほどに話した。
今までの空白を埋めるように、たくさんたくさん。

63 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/22(日) 12:09:20.18 ID:JDjEebc3o [7/10]
「無事二人は結ばれたんだねー、よかったよかった」

「それについては感謝してる」

「おう、感謝しろ」

「感謝しているが、お前の態度が気に喰わない」

「あぁん?」

「……ありがとな」

「うむ」


「あ、先輩」

「アイツから聞いたよ。よかったね」

「はい、先輩のおかげです!」

「おかげ……ね」

「……?」

「私が言う事じゃないかもしれないけどさ。アイツの事、宜しく頼むよ」

「……はい、頑張ります」


「……」

「……さーて、コッペパンでも買いましょうかね」

64 自分:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/11/22(日) 12:15:43.04 ID:JDjEebc3o [8/10]
次の休みは何をしようか、自然と頬が緩む。
妹も同じなのだろうか、同じであったら嬉しい。

今頃お姉ちゃんは何をしているだろう。
昨日の事をふと思い、私は顔を真っ赤にした。
お姉ちゃんも同じなのだろうか、そうだったら可愛いかもしれない。

妹よ。

お姉ちゃん。

大好きだ。

大好きだよ。
プロフィール

Author:花見月
主に2ch系掲示板で自分が書いたSSを纏めてます
思い出したものからかたっぱしに記事にするので順不同で

twitterでも更新報告したりしてます
@hanami2ki

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